797.アルミラージ
翌日。朝ご飯のサラダを食べた後、俺たちは一緒にアルミラージを見に行くことにした。
ステラとディアがお出かけの準備をしている。
「るんるん、ぴよ!」
「るんるん、です……!」
ステラがディアの毛をブラシして整えている。
見るからにウキウキだった。
「ふふふ、身だしなみは大切ですからね」
しゅばっ。ステラが今度はマルコシアスの背後に立つ。
「マルちゃんも後ろ、寝癖がついていますよ」
「むっ、見落としてたんだぞ」
「ふふっ……直してあげますね」
しゅっしゅっ……。ステラが微笑みながらマルコシアスの寝癖を直す。
「ウゴ……きあい、はいってる」
「そうだな……。楽しみにしているんだろうな」
テーブルに置かれた鏡の前で、ディアがきゅっと振り向く。
「かわいいぞ、ディア」
「ありがとぴよ!」
カイ達はコカトリスショックを抱えているが、まぁ……。
もうディアのことは伝えてあるしな、俺は自分を納得させる。
ステラがすっとディアを懐に入れ、窓から外を見た。
黒い雲が薄く広がり、太陽を半分ほど隠している。
「ちょっとお天気は怪しいですが……仕方ありませんね」
「ウゴ、雨が降るかも?」
ふたりの言う通りだな。お散歩日和とは言い難い。
空気もなんだか重く湿っている。
「念の為に折りたたみ合羽を持っていくか」
にんじんも前もって植物魔法で生み出して、木製のカゴにつめ込んでおいた。
お土産も準備オッケーというわけだ。
家を出て、ゆったりと歩く。
「もうちょっとで一雨、降りそうなんだぞ」
合羽は持って来ているが、アルミラージは濡れていいのかわからん。
植物魔法で避難はどうとでもなるが……家も作れるしな。
「そろそろ着くぞ……あっ」
なんとカイの宿泊所の前に、4体のコカトリスがたむろしていた。
コカトリスたちの横にはアルミラージと倒れたカイがいる。
「ぴよ……?」(寝てる……?)
「ぴよぴよ」(なんか突然寝ちゃったね)
コカトリスたちがカイを取り囲んで頭を傾げている。
これは……もしや。
「きゅー」(寝てないよー)
「きゅっきゅー」(寝てる振りしているだけだよー)
アルミラージがカイを前脚でつんつんしている。
この様子を見たディアが叫ぶ。
「死んでるぴよよー!」
「いや、昨日説明したけど死んでない」
ちゃんとカイの事はディアにも伝えている。
だがこれは不幸な行き違いというやつだ……。
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