795.カイとぴよ
「うーん、コカトリス……」
「きゅいー」(寝苦しそう―)
うなされるカイのため、アルミラージはカイのベッドにもぐりこんでいた。
なんだかんだ言っても、絆はしっかりあるのだ。
「きゅいきゅー」(よしよしー)
アルミラージが前脚をカイの胸の上に乗せて、カイの体をさする。
ポニーサイズのウサギの前脚である。当然、それなりに重い。
「……うぅ」
さらにアルミラージの体で、カイは壁に押し付けられる。
ぎゅむむっと。
「うーん……!」
「きゅいー」(すやー……)
やがてベッドの温かさでアルミラージも眠りに落ちる。
ぎゅむむー。
さらにアルミラージの寝相キックにより、カイはついに目を開けた。
「……起こされちゃった」
でも苛立ちは全然ない。
正直、アルミラージと寝ているとよくあることだ。
今もアルミラージは足をバタつかせている。
「少し散歩しよ……」
こうしたときは、一度時間を空けた方がいい。
カーディガンを羽織って、カイは家の外に出た。
「夜は森みたいだなぁ」
家の灯りが消えていても、いくつか街灯はある。
夜勤の冒険者向けだそうだ。なので歩くのに支障はなかった。
びくっ……!
街灯の下にコカトリスの着ぐるみ――ナナがいた。
ベンチに座って本を読んでいる。
「ふぅ……着ぐるみですね」
カイはコカトリスに対する防衛本能に身を震わせるが、それを抑えこむ。
あれは着ぐるみ……着ぐるみなのだ。
コカトリスとコカトリスの着ぐるみは区別しないといけない。
北の諸国にはヴァンパイアの着ぐるみ騎士も多い。
着ぐるみで寝たフリしてしまうのは、慎まなければならないのだ。
「ぴよよー」
「おわっ……! 目の光っているコカトリスが……」
向こうから地下コカトリスが歩いてくる。
暗い地下で生活していたため、まだこの時間でも眠くないのだ。
そのためぺかーと光らせて散歩をしている。
「心が休まらないな……」
コカトリスは人を襲わないと理性ではわかっているのだが……。
カイはつぶやくと、家へと小走りで戻った。
「あっ、ベッドが……」
ベッドではアルミラージが壁にくっつくように寝ていた。
これでカイの寝るスペースは確保されるわけだ。
「きゅいー……」
「ふふ、ありがとう」
カイはそっとベッドにもぐりこむ。
アルミラージの身体は、カイにとっても癒しなのである……。
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