791.宿泊用の家
コカトリスが完全に去ってから、空いている大樹の家へとカイたちを案内する。
「ははぁ……この大樹が全て魔法、ですか……」
「驚異的ですな……」
村の説明を聞くに、騎士たちは感心しきりだ。
やはりこれだけの建物を魔法で作るのは難しいようだな。
「お野菜と果物もたくさんありますからね……!」
まだ日中なので、村人たちは普通に働いている。
こちらをちらちらと見られているが――ナールが後で説明するから、大丈夫だろう。
「それでさっき聞きそびれたが、水の凶兆が出たと?」
「はいっ! 占星団からは、そう聞いておりますが……」
それは十中八九、ブルーヒドラのことだろう。
的中率は低いと言っていたが、この件については百点満点をあげてもいい。
黙っていることもできるが、そうするメリットはないだろうな。
正直に伝えよう。
「ふむ……それについては、実は事が進んでいる」
「えっ、そうなのですか!? すでに心当たりがあるのですかっ!?」
カイが信じられないという目をしている。後ろの騎士も意外そうにしていた。
「たまには当たるんだなぁ……」
「だから予算も結構出ているんだってさ」
散々な言われようだ……。
しかし占星団については俺もいい噂は聞いていない。
極めつけの変人揃いで誰もが謎の儀式に熱中しているとか。
しかし初代国王の時代から厚遇されてきた部署だ。
戦乱の時代にはかなりの功績を挙げたとからしいが……。
まぁ、今も重視されているのは変わっていないということか。
そんなことを言っているうちに、カイたちの宿泊用の家へ着いた。
「詳しくは中で話そう、入ってくれ」
カイ達にこれまでの経緯をざっと説明する。
これらは冒険者ギルドにも報告済みなので、問題ない。
「なるほど、なるほど……」
紅茶を飲みながら、和やかに話す。
「こういう場合はどうなるんだ? すでに当たっていると思うわけだが」
「我々の仕事は、あくまで警告に留まります。もちろん緊急事態では加勢しますが」
ふむ、的中率二割ならそうなるか。五回に四回は空振りなわけだからな。
他の騎士二人はアルミラージの世話をしている。
旗や荷物を取り外し、毛布をかけていた。
「そっちを外してくれ、よいしょっと」
「リラックスはできているようだな……」
「きゅ……きゅい……」(はふ……すやー……)
というか、寝そうになっているな。だらーんと床に寝転がっていた。
「加勢か……ちなみにどんな魔法が使えるんだ?」
「探索魔法です。私の魔法は魔物と魔法具の調査に特化しています。今回の件でも力になれるかと」
「ほう……それはちょうど良いな」
さすが騎士。便利な魔法を使えるな。
「ただ、先ほどの話だと難しいかも……土と水に覆われているものは、うまく探せません」
「それでも構わない。少しでも絞り込めるなら」
ステラも真剣な表情だ。たまにアルミラージをチラ見しているが。
「そうですね……ララトマの音楽で攻撃するにしても、位置がある程度わかれば楽です」
その通りだ、安全地帯がわかるだけでも大きい。
少なくとも非戦闘員のララトマを危険に晒さずに済むからな。
お読みいただき、ありがとうございました。







