789.コカトリスを見て
俺は再びにんじんを生み出す。
苦労してそうなカイのため、今度は多めに五本くらいだ。
「うぅ、ありがとうございます……!」
にんじんを見たアルミラージが再びエキサイトし始める。
カイがすすっとにんじんを受け取った。
「「きゅっぷいー!」」
「よしよし……並んで、並んで」
アルミラージの口元ににんじんを持って行くと、勢い良く食べ始めた。
ぽりぽりぽりー!
「ふむ、ちゃんと食べてくれるな」
「夢中ですね。そちらの方もどうでしょうか? ご飯、あげてみますか?」
「ええ、もちろんですっ!」
ステラにもにんじんを渡すと、そちらにもアルミラージが行く。
「はーい、こちらにもご飯がありますよー」
アルミラージはステラからのにんじんもぽりぽりと食べる。
もちろん、にんじんを食べさせながらステラは油断なく撫でまわしていた。
「きゅいきゅいー!」
にんじんを食べているアルミラージは無防備だ。
ステラを真似て撫でてみても大丈夫。温かく、ふわふわしている。
「ふむ、実にいいな……」
このアルミラージに乗るのは気持ち良さそうだ。
そんな俺達を見て、カイが目を丸くしている。
「お二人とも慣れてますね……」
「ああ、この村にはもう魔物がいるからな」
「えっ、そうなんですか?」
「あっ」
ステラが振り向き、耳をぴくぴくさせる。
「ぴよっ!」(ウサギさんだっ!)
おっ……言った矢先にコカトリスの鳴き声が聞こえてきた。
木箱を持ったコカトリスとジェシカ、テテトカが通り掛かる。
「何の騒ぎかと思えば、アルミラージですわね……」
「はわー、おっきなウサギさんですねぇー」
どうやら荷物の移動中、気になって覗きにきたらしい。
「ぴっぴよー」(よっすー)
コカトリスが木箱を地面に置いて、羽をぴよっとさせる。
「きゅい……?」(おっきなひよこ……?)
アルミラージがにんじんをぽりぽりしながら、首を傾げる。
「コ、コカトリス……!? どうしてこんなところにっ!?」
「う、うぁぁ……!」
カイ達が思い切り怯えている。
「……まさか」
「コカトリスです!! コカトリス!」
叫ぶなり、カイ達がいきなり倒れた。
「ええっ!?」
「「「ぐぅ、ぐぅ……」」」
カイ達三人が寝息らしきものを立てている。
しまった、この三人もコカトリスを見るとショックが……?
「やはり……」
ステラはアルミラージを撫でつつ、カイ達の様子を見て頷いている。
その間、コカトリスはアルミラージと見つめ合っていた。
「お互い、もふっとしてますねー」
「ぴよぴよ……!」(ひよこじゃないよ、コカトリスだよ……!)
「きゅっぷい!」(ひよこじゃないんだ!)
「ぴよ~?」(それで、この村にはどんな用で来たの?)
「きゅ……きゅい?」(多分……ハイキング?)
「ぴよー!」(いいねー!)
なんだかコカトリスとアルミラージは和気あいあいとしているな。
しかしカイは……起こしに行ったほうがいいのか?
お読みいただき、ありがとうございます。







