788.にんじん序列
「きゅっ、きゅい!」
「ふふふ、丸いですねー。やわらかですねー」
ステラはほわほわとアルミラージを撫でている。
「アルミラージちゃんが初見でここまで心を開くなんて……魔力を抑えているだけではありませんね」
「もふもふさんとの礼儀には自信がありますっ!」
コカトリスといつも触れ合っているからな。
どこを撫でればいいのか、本能的に体得しているのだろう。
ステラがアルミラージの顎の下をゆっくり撫で上げる。
「きゅい~」
アルミラージはうっとりしている。
そこでステラが申し訳なさそうに言ってきた。
「エルト様、にんじんを生み出してくれませんか?」
「うん? こうか?」
俺は手に魔力を集中させ、にんじんを生み出す。つやつやとして立派なにんじんである。
まさか、このにんじんを……。
「きゅい!?」
「きゅきゅい!!」
「むっ、やはり興味津々だな」
にんじんを一目見るや、アルミラージが興奮し始めた。
やはりウサギの魔物だけあってにんじんには目がないのか。
「この子達ににんじんをあげても大丈夫か?」
「え、ええ……にんじんですよね? 先に貰えますか?」
「構わないぞ」
カイににんじんを手渡すと、ぽりぽり食べ始めた。
カイが先に食べるのか。いや、毒見とかだよな。
「きゅいー!?」
「きゅ、きゅいいーー!!」
だが、アルミラージは違う受け取り方をしたようだ。
ショックを受けたアルミラージ達がカイを取り囲む。
「ぽりぽり……。うん、大丈夫で――あ、いたっ! どつかないで!」
「きゅい! きゅい!」
ドンドン! 興奮したアルミラージがカイにタックルしている。
容赦ないぞ。
「……いいのか、これ?」
「カイが食べたのは毒味と序列確認ですね……。ご飯をあげるタイミングも大切なのです」
「にゃ。馬や番犬でもそういうのありますにゃ」
「群れのリーダーがまずご飯を得る、アルミラージには序列がありますからね」
カイは思い切り、どつかれているが。
「わ、わかったから! 新しいにんじんもらうから!」
「……きゅい!」
アルミラージのタックルが止まる。
「ふむ、普通にコミュニケーションを取っているな」
さすがにそうでないと乗れはしないか。
カイがアルミラージのテイマースキルを所持しているのは確実だな。
にしても、カイがちょっと涙目になっている。
……苦労してるんだな。
お読みいただき、ありがとうございます。







