784.来訪者
今日の俺は農業生産エリアをナールと一緒に視察していた。
雲が出ており、少し肌寒いかもだ……。
生産エリアではたくさんのドリアードが埋まっている。
もはや見慣れた光景だった。
「あとは雷神球か……」
雷神球の製作レシピはすでにアナリアへ渡してある。
こちらも問題はなく、あともう少しで完成と聞いていた。
「アナリアが必死に作っておりますのにゃ」
「俺が手伝っても良かったんだが……」
雷神球も前世のゲーム中ではそこそこ作った。こちらでも作れるはずだ。
しかしアナリアは村の薬師を総動員して、俺の手伝いを断った。
自分達だけでやり遂げたいらしい。
「にゃ、アナリアもエルト様の臣としての役割がありますのにゃ……」
ナールがいくぶん、言いづらそうに続ける。
「アナリアも他の薬師も有能ですにゃ。できること、できないことの線引きは大丈夫ですにゃ」
「そうだな、信じて待とう。もし芳しくなければ、いつでも手伝う」
住人の能力を信頼するのも領主の器量だからな。
どーんと構えているほうがいいか。と、息を切らせたアラサー冒険者が駆け込んでくる。
「ここにおりましたか、エルト様!」
「どうしたんだ、慌てて?」
彼がそんなに慌てるなんて珍しい。
「村の裏口に――騎士団が来ていますぜ!」
「騎士団だって!?」
騎士団とは、魔法使いで構成された国家公認の武力組織だ。
兄が来て以来の久し振りの来訪だな。事前に連絡はなかった。
「わかった――すぐ行く」
「こちらにも心当たりとかはないんで……通り掛かりとは思いますが」
「ふむ、俺のほうでも騎士団に用はない」
騎士団の主な任務は魔物の討伐と貴族の逮捕だ。
通行だけならば連絡をよこすはずだが……緊急事態だろうか。
いや、敵対的な態度は良くない。
この村にやましいことは……まぁ、大量のコカトリスくらいか?
しかしコカトリスはザンザスにもいるが、問題になっているとは聞いたことがない。
「案内しますぜ! 今は村の入口におりやす!」
「にゃーん、あちしは……ステラを呼んできますにゃん!」
「ああ、頼んだ!」
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