783.フライボール
「ウゴ、そういう意味なんだ」
ふむ、狼煙はフラワーアーチャーとの戦いでも使っていたな。
「色々な意味があるんだな」
木陰ではコカトリスがしゅっしゅっと運動している。
「ぴっぴよ、ぴっぴよー」(いっちにー、いっちにー)
羽と腰をひねった体操だな。実に平和だ。
コカトリスで癒されていると、アラサー冒険者が声をかけてきた。
「エルト様もボール投げですかい?」
「ああ、今度アナリアに作ってもらうポーション投げの練習でな」
大ボールを掲げて見せると、アラサー冒険者も興味が出てきたようだ。
「大きなボールですねい、持ってみてもいいです?」
ふむ、彼クラスの冒険者でどうなのか……確認したくはある。
「じゃあウッドと投げあってみてくれ」
「了解ですぜ」
「ウゴ! キャッチボール!」
大ボールをアラサー冒険者に渡すと、軽々と掲げる。
投球フォームも難なく形にしていた。
おー、やはり腕力あるんだな……。俺だとちょっと厳しい。
「ステラはどうだ?」
「わたしはこんなところですね……!」
ステラは大ボールを胸の前に持って来て――ボールが消えた。
否、瞬時に上空へ放り投げたのだ。
全員で空を見上げる。
「すごぴよー……」
「一瞬で上までいったんだぞー……」
太陽の光を浴びながらボールが戻ってきた。
ボスンッ!
ステラはその場から数歩前に行き、完璧にキャッチする。
「よいしょっと……!」
「さすがステラだな」
「でも本当は真下になるよう投げたのですが、うまくいきませんでした」
十分な気はするが、ステラの基準は厳しい。
そこは超一流のこだわりがあるんだろうな……。
「ぴよよー」(たのしそー)
「ぴよっぴ」(投げてみたいー)
「あっ……ぴよちゃんもやりますか?」
興味を持ったコカトリス達がふにっと集まってきた。
「ぴよっ!」(さらにタフで引き締まった身体に……!)
「ぴよよ~」(お日様の下で動きたい~)
もっふもふと四方からせがまれている。
「ふふふ。じゃ、あっちでキャッチボールしましょうね……!」
残されたのは俺とディア、マルコシアスだ。
「一般人レベル組なんだぞ」
「ま、まぁ……俺達は俺達でキャッチボールをしようか」
「ぴよ! あのたかいの、やりたいぴよー!」
ディアが羽をしゅっしゅと上下に振る。
「真上へのボール投げだぞ?」
「それぴよっ!」
しゅっしゅ! 羽を上下しまくるディア、かわいい。
「確かにあのしゅっとボール消えるのはかっこよかったんだぞ」
「よし、じゃあ上に投げるのを中心でやるか」
キャッチボールというよりはフライの練習かもだが。
これはこれで楽しいのだ……!
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