781.カイと出張
「うぅ……いますぐ出立ですか? 戻ってきたばかりなんですが」
カイの所属する騎士団は主にダンジョン、魔法具の取り締まりを行う。
その関係上、国中を飛び回っているのだ。同僚は出張が多すぎるせいで妻に逃げられていた。
カイも家に帰ってきたら蜘蛛の巣が張っていたことが何回かある。
「善は急げニャ!」
ポルカは一蹴する。元より譲歩など期待できなかったが。
しかしさすがに気の毒に思ったのか、ポルカは付け加えた。
「詳細は後ほど通達、出張手当は割り増ししておくニャ!」
「うぅ、ありがとうございます……」
王宮へ大きな影響力を持つ宮廷占星団に逆らえるはずもない。
お辞儀をしてポルカの元を去ろうとするカイ。そこへポルカが声を掛ける。
「あと、あの英雄ステラが復活という話も入ってきたニャ」
「それは私も聞いたことがありますが……本当でしょうか? またまた偽者では?」
その噂は王宮にまで届いていた。英雄ステラの名前は偉大であるが、ゆえに偽者も多い。
歴史学者の一部はスティーヴンという冒険者もステラだったという主張まである。
伝説に彩られた冒険者であるがゆえに、真実もまた霧の中だ。
しかしよほど自信があるのか、ポルカは吊られながら胸を張る。
「我輩のオカルトセンサーにビンビン来てるニャ……!」
「何センサーって言われました?」
「あらゆる謎を探求し、国内の安全的なモノを守りたい占星団としては興味深い噂ニャ」
「ええと……では英雄ステラについても確認すればいいのですね?」
「ニャ! 君は実に出来る人材ニャ!」
満足そうにポルカは頷いた。ぷらーんと揺られながら。
「特別ボーナスとして、このぶら下がり閃きセットを家に送っておくのニャ!」
カイは即座に答える。
「……いえ、それは結構です」
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