780.王都の占星術師団
所変わって、王都の宮廷占星団の館。
数々の塔の中にひときわ高い尖塔を備えた館がある。
『国の危機と酔狂はここから始まる』
宮廷占星団は謎めいた魔法具により、様々な危機を察知して対処する特務機関である。
その占星団の主に、とある騎士が呼ばれていた。
柔らかそうな金髪と巻角を持つ、羊の獣人シープ族の女性――カイである。
ニャフ族とそう変わらない身長だが、れっきとした騎士だ。
主の執務室に急ぐ彼女を占星団の魔法使いが呼び止める。
「おー、久し振り! 元気だった?」
「ええ、はい……。おかげさまで」
ちらっ。呼び止めた彼は、赤い液体と蛇の入った瓶を持っていた。
「コレ、見よう見まねで作ったマムシ酒なんだけど、いる?」
「……いえ、ポルカ様に呼ばれていますので」
「そっか。ポルカ翁はさっき三杯飲まれたけど」
ひっく。どうやら彼もすでに出来上がっているらしい。
彼の用はそれだけだったようで、ふらふらしながら手を振って歩いていった。
カイは小さくため息をする。つまり、ここはそういう所なのだ。
「いつも通りだなぁ……」
彼女は占星団の主、年老いたニャフ族であるポルカの執務室に辿り着く。
「――失礼いたします。カイ・ストレイホーン参りました」
「良く来たのニャ、大変なのニャ! ヤバヤバなのニャ!」
ごちゃっとした執務室。
なぜかポルカは天井からびよーんとミノムシ状態になっている。
最近、ポルカがはまっている閃き仕事術らしい。
変人なのだ。割といつものことなので、彼女は動じないが。
「カイ、これを見て欲しいのニャ!」
ポルカがみょーんと揺れながら、テーブルに首を向ける。
幅広の執務机で、これまたごちゃっとしている。
カイがテーブルへ行くと、上に大きな水晶玉が置いてあった。
「……またこの水晶玉が何か知らせを?」
「そう、またなのニャ! 水晶玉が凶兆を察知したニャ! ヤバいニャ!」
だがカイは知っている。この水晶玉の的中率は約二割、ちょっと微妙だ。
それでも他の占いの的中率からすれば優秀らしいが。
「今回は北のザンザスのほうニャ! 水に凶兆ありニャ!」
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