777.アルミラージの爪
「さて、雷神球の素材を回収しないとですね」
「にゃー。それじゃぱぱっと集めるにゃ!」
「そうしましょうか。今日中に素材を集めて、翌朝に戻る――ということで!」
こうしてふたりはザンザスを歩き回り、雷神球の素材集めをした。
お金も信用もあるふたりである。素材はすぐ集まっていく。
「順調にゃーん」
だがザンザスも広い。素材集めは夜まで続いた。
とはいえ残る素材はひとつだけ……。
公園の木陰で休みながら、アナリアが素材レシピを見つめる。
「あとはアルミラージの爪ですか……」
「にゃー。これはちょっと心当たりがあるにゃ。裏路地のお店にゃ」
ふたりは公園からほど近いザンザスの裏路地へと入った。
夜も近くなり、かなり薄暗い。
「ちなみにどういう心当たりなのですか?」
「裏ルートってやつにゃ」
「答えになっているような、いないような」
「玄人向けってやつにゃ」
ザンザスは裏路地でも治安が悪いことはない。
冒険者ギルドがきちっと治めているからだ。
ただ大通りから外れた店はそれなりの店が多い。
品質が安定しなかったり気難しい店主だったりと素人向けではなくなる。
そんなふたりが辿り着いたのは『いいものたくさん亭』という怪しげな看板を掲げる店だった。
「ここ、大丈夫なんですか?」
「掘り出し物が結構あるにゃ。でも壺と絵は全部安物にゃ」
「はぁ……まぁ、素材があればいいのですが……」
店に入ると、気だるげな犬の獣人が店番をしていた。
「おー、ブラックムーンの。久方ぶりだわん」
「お邪魔するにゃー」
暗めの店内には雑多に品物が置かれていた。確かに骨董品が多い。
アナリアに鑑定能力はないが、なんだか怪しく感じる……。
「アルミラージの爪を探しているにゃ。置いてないかにゃ?」
「運がいいわん。少し前に入荷したんだわん」
店番はしゃがんで棚を漁ると、すぐに顔を出す。
モノは上質紙に包まれてるようだ。
「これだわん」
包みを開けると、そこには人のモノよりちょっと長めの爪があった。
「ほうほう、確かに……どれどれにゃ」
ナールが手袋をして爪を持ち上げ、じーっと眺める。見た目にはただの爪だ。
「ふむふむ……」
アナリアも屈んで片目を閉じ、じーっと見る。
じーっ……。
少ししてアナリアはナールへ頷いた。
ほのかに魔力がある。
「これをもらうにゃ」
「お買い上げありがとわん!」
「……ちなみにこれはどこから? アルミラージは国内でほぼ見かけないはずですが」
アルミラージはかなりレア度が高い魔物ではある。
それでいて知能が高くて馬代わりになってくれるので、需要が高い。
国内だと大金持ちや貴族くらいしか飼育していないのでは……とアナリアは思った。
そんな彼女に店番は手をぼふっと振る。
「とある騎士団からの流れモノだわん!」
お読みいただき、ありがとうございます。







