768.水柱
「あの円盤で地面のノイズを除去して調べているのです。結構センスが問われます」
シャカシャカ、ピッ。どう見てもDJイスカミナだ……。
まぁ、楽しそうに仕事ができるならいいか。
「えいっ、えい!」
「苦戦してるにゃ」
「し、してないよ!」
ナナのほうは、死にゲーを必死にやっているゲーマーのようだ。
少しして、イスカミナが手を止めずに声を上げる。
「もっぐー! 反応があったもぐ!」
「本当か? どのあたりだ?」
「もぐ! エルト様の立っている真下もぐ!」
「えっ」
すすっと俺は移動する。
いきなり言われてびっくりしてしまった。
「堀から横に小さな水脈が繋がっている感じですもぐ」
「にゃ。空堀だったけど、地下のどこかと繋がっていたのかもですにゃ」
ふむ、ララトマがいた場所に近いのだろうか。
前に彼女から聞いた時、もっと広がってるかもと話はあったが……。
「ここから一番近いと湖が水源になるのですわ?」
「多分、そうだな。あそこ以外に大きな水源はない……」
「んー……ちょっと待って」
操作機をカチャカチャしていたナナが首を傾げた。
「複数反応あり。まだなんかあるみたいだけど」
「小さなボムマッシュルームじゃないのか?」
そこに慌てたナナとイスカミナの声が降ってくる。
「局所的に魔力増大中……やばっ!」
「もっぐ! こっちも地下から魔力が立ち昇ってきますもぐ!」
ふたりが叫んだ瞬間、俺にも異変がわかった。
堀の水からぞわっと肌がざわめく、異質な魔力が察知できたのだ。
それはステラも同じだったようで、鋭い声が飛ぶ。
「戦闘準備です!」
魔力を集中させたと同時に、堀から五本の水柱が上がる。
高さは――それぞれ五メートルくらいか。自然現象じゃないな。
「くっ……なんだ!?」
感知できる魔力は爆発的に増大していた。明らかに水柱から魔力が放たれている。
それにしても――変な魔力だ。
ダンジョンの中とはまた違う、人工物のようなザラザラ感がある。
「あれは……!」
ステラが腰に差したバットを構える。
「気を付けてください、魔王具ですっ!」
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