767.イスカミナも
「操作が難しいのがアレだけど。性能は保証済みだよ」
ナナは操作機のボタンを忙しく連打している。
思ったよりも大変そうな機械だ。
「えいっ、えいっ」
「大丈夫ですか? 若干、不安になってきましたが……」
ステラがついに言葉にした。
ナナの発明品は相当程度、俺も体感している。
安全なのだが安全に見えないという……。
金属トンボは命が燃え尽きる間際の昆虫のように、ふらふらだ。
意図的に再現しているなら凄いモノだが……。
「大丈夫、雪山で使ったソリよりちょっとだけ操作が難しいだけだから」
「あれは傾斜を滑っただけじゃないのか?」
俺のツッコミにナナがちょっと視線をそらした。
「そうとも表現できる。操作性は一言では言い表せない、深淵な世界だ」
「……答えになってないですわ」
金属トンボはふらふらしながらも水上を飛んでいく。
とりあえず飛べてはいる。
「もっぐ。地面より下なら私もお役に立てるもっぐ!」
「そうです! イスカミナの調査道具もありました……!」
ステラがはっとする。
ナナのに気を取られていたが、イスカミナの調査能力もかなりのものだ。
イスカミナが背中のバッグからターンテーブルのような魔法具を取り出す。
ターンテーブルには円盤がセットされており、ヘッドフォンのような器具も付いている。
うっ……また頭が……。記憶が揺さぶられる。
この魔法具――まさかイスカミナはDJになるのだろうか。
「にゃー、地質調査用のやつですにゃ。北で見たことありますにゃ」
「そうもぐー。こっちは地中の魔力を探知するもぐ」
イスカミナは魔法具を地面に置き、ヘッドフォンを装着する。
「地質調査、はじめるもっぐー!」
「こっちも水中調査は負けないよ! えい、えいっ」
ナナも負けじとレバー操作に力を入れる。
だが、段々と金属トンボが水面に近づいているような。
「高度が落ちてる……」
「だ、大丈夫!」
しかし金属トンボは無情にも堀の水に落下する。
……ぽちゃ。
「落ちましたですわ」
「ノンノン、水陸両用だよ。ここからが勝負所だ……!」
ぶくぶくぶく……。
金属トンボは水中でもがき、堀の底へ沈む。
「これは沈んでるとは違うのですわ?」
「全然違うよ」
「にゃ。ということは、水面にまた浮かぶのにゃ?」
「浮かばないよ。金属だもの。網で回収するんだ」
「…………」
うーむ、合理的というかそれでいいのかというか。
「もっぐ、もっぐ♪」
チェケラ! イスカミナはご機嫌にターンテーブルを操作する。
シャカシャカ、ピッ。イスカミナは軽快に円盤を回していた。
ステラも肩と脚がちょっとノッている。
「ふむ……できますね。あのタイプの調査は難しいのですが」
「そうなのか?」
DJになっているようにしか見えないが……。
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