760.ナールへお届け
冒険者ギルドにたどり着くと、さっそくナールが出迎えてくれた。
「にゃー! おかえりなさいですにゃー!」
「ただいま、ナール」
「ただいまです!」
「ザンザスへの出張、いかがでしたにゃ?」
「素晴らしかったよ。大都市だったな。ダンジョンも本当に大規模だったし……」
執務室へ戻りながら旅の話に花を咲かせる。思い返してもザンザスでは色々とあった。
「物流倉庫も見学したし、博物館にも人がたくさんいたな。一番凄かったのはやはりダンジョンだったが……」
「ですね。やはりザンザスのぴよちゃんはビッグでふもふもでした……!」
ふむ、ザンザスのコカトリスは確かにこの村に住んでいるコカトリスよりも太め――もとい
こんもりとしていた。いつかディアがあのサイズまで成長したら、家の間取りは色々と調整しないといけないだろうな……。
「おっと、そうだ。先に渡しておこう『鏡面の雪結晶』だ」
第4層でゲットした希少アイテムである。元々はこのためにザンザスへと行ったのであった。きらきらした雪結晶を納めた小箱をナールに渡す。
「にゃ! ありがとうございますにゃ! これで秤もきちんと動かせますにゃ!」
「よかったですね。雪結晶で動くという秤ということは魔力の鑑定にも必要でしょうし」
「そうなのですにゃ。魔力ある果物やポーションの鑑定を手早くやるのに、必要なのですにゃ」
「ふむ……それなら予備も取ってくればよかったかもな」
「大丈夫ですにゃ! 調子の悪い結晶を交換すれば、数十年はもちますにゃ! ザンザス製ならもしかしたら50年くらい大丈夫かもですにゃ」
「そ、そんなにもつのか。なら安心だな」
さすがのレアアイテム。それだけ長持ちなら価値が高いのも頷ける。その後、ナールは秤を調整しに行き、俺とステラはさっそく書類仕事に取り掛かった。
と言っても大した仕事はなかったが。ちゃんと残っていた人たちが処理してくれていた。ステラと手分けして仕事を終わらせ、家に帰る。
またザンザスに行くのも悪くはないな。旅から戻ったばかりだが、俺はそんなことを考えていた。
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