754.マツノタケマッシュルーム
ホテルに戻り、着ぐるみを脱いで解放感を味わう。そしてひと休みしてから、豪勢な晩餐が始まった。メインはマツノタケマッシュルームというステーキだ。
東方の非常に貴重なキノコらしい……どう見ても、肉厚でバカでかい松茸だった。
「これは赤松という樹木の根本にしか生えないので、マツノタケという……極めて美味なキノコです」
説明を聞いても松茸だった。この世界に松茸があるとは初耳だったが。ステラにこそっと聞いてみる。
「ステラ、このキノコについては知ってるか?」
「ええ……大変希少なキノコですね。わたしも数回しか口にしたことはありませんが」
なんと、ステラもそうなのか。ほどよく焼かれたマツノタケマッシュルームからは鼻をくすぐる匂いが漂う。
「ウゴ、いい香りだね」
レイアがうんうんと頷く。
「マツノタケは匂いも楽しむもの。今日、やっと入荷して手に入ったので……ぜひとも皆さんで食べて欲しく!」
「それはそれは、頂こう」
ちなみにコカトリスにも俺たちと同サイズのマツノタケのステーキが並べられていた。すでにコカトリスのくちばしからはよだれが垂れ、ゆっさゆっさと身体が揺れている。
夜なので着ぐるみを脱いだナナ。彼女の目は用意されていたソースのほうに向いていた。
いくつものソース入れには、色とりどりのソースが入っている。
「ふむふむ、ガーリックソースにオニオンソース。トマトソースもちゃんとあるね」
「マツノタケは幅広いソースに合うそうなので、やや薄めですが複数用意してみました」
ディアとマルコシアスもテーブルの上でステーキとソースをきらきらと見ていた。
「ぴよ! たくさん楽しめるぴよね!」
「わっふ。ソースの豊かさは人生の豊かさなんだぞ!」
重い言葉だ……。調味料がとても大切なのは間違いない。一通り料理の紹介も終わったし、そろそろ食べ始めよう。
「じゃあ、そろそろ食べようか。恵みに感謝を!」
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