751.草の感想
「草だんごは、まだ残っているか?」
「まだあるよー」
ナナがお腹のポケットから、草だんごを取り出す。後ろのコカトリスたちの視線が、ナナの持つ草だんごに注がれる。
「ぴよ……っ」(じゅる……っ)
「……ぴよ」(……我慢我慢)
しかしさすがに欲しいとは言い出さなかった。
「エルト様……」
「ちょっとかわいそうだからな。少しご飯をあげるのは、構わないだろう?」
見ると、レイアもあの空腹コカトリスを悲しんでいた。
「もちろんです! 私もよくダンジョン帰りには、余った食材をぴよちゃんにプレゼントして、撫で撫でしてますし……」
「なら、決まりぴよ!」
「わっふ。でも、ここの草は……ダメなんだぞ?」
「ウゴ、そうだね……。村の草は、かなり食べてる気がする……」
そうだな、村に住んでいるコカトリスは、よく雑草とか食べている。おやつ代わりなのか、寝そべりながら、その辺の草をちぎって食べてるような……。
ここのススキみたいなのは、食べないのだろうか?
「ぴよ……」(ここの草……)
コカトリスたちがススキをちぎって、くちばしに運ぶ。もしゃもしゃ……。
しかし、明らかに美味そうな顔をしていない。第3層の謎キノコよりもマズいのか……。
「ぴよよ」(つまり、ここの草は味がないのです。繊維が固くて、無味無臭のセロリを思い浮かべてください。水気がなくて、極度に味の薄いキャベツの芯にも似ています)
「ぴよよっぴ」(そう……わずかな味もせず、苦さも辛さもない……。これは『無』。悲しき嚙み応えだけが、そこに……。あの鮮烈な黄色のキノコにあった、奥深い苦味に比べても……)
「ぴよ」(あと村の土と水は、とてもいいのです。その辺の草にさえ、テテトカちゃんのよくわからないパワーが染み込んで、深みとまろやかさが生まれています。でもここの草は……うん、噛めるだけ……)
辛辣な評価だった。
にしても道端や広場の草にさえ、ここのススキよりはいいのか……。
ナナから草だんごを受け取ったステラが、草むらの隙間から出る。
「ぴよ! ぴよ!」
しかし空腹ぴよはそれに気付かないで、木を揺らし続け――ステラは、そのまま近寄る。
そして、あと数歩というところで。
「ぴよっ!? ぴよぴよぴよ……」
空腹ぴよがくむくむと何かを嗅ぎ、ステラへと振り返った。
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