750.はらぺこコカトリス
しばらく第1層を進む。ここは本当にのどかだな。ちょうどいい気温、晴れた空、草原。お昼寝の場所としても悪くない。
「ぴよ……。そーいえば、仲間が見当たらないぴよね」
「わふ。たまたまなんだぞ?」
それにレイアが答える。
「ぴよちゃんはフリーダムなので、出会えるかどうか運ですね」
「ウゴ、やっぱり……。んん? 向こうにコカトリスがいるよ」
ウッドが草むらの先を指さした。背の高い草のせいで、コカトリスは見えないな。
ウッドの指し示した方向には、背の高い痩せた木がある。幹の途中に枝はなく、上にしか枝も葉もない。
「見てみるか」
「ですね! 行きましょう!」
コカトリスについては、ステラは常に積極的だ。とはいえ、無用に刺激しないように、そっと近付くことにするが。
近寄っていくと、姿は見えなくてもコカトリスの鳴き声が聞こえてきた。
「ぴよー!」
ん?
なんだか、やけにコカトリスの鳴き声が荒ぶっているような。
「なんて言ってるぴよ? わかんないぴよ」
「そんなことがあるのか……?」
ディアがふにっと頭を傾げる。確かにわかるような意味のある鳴き声ではなかったが。
「ステラはわかるか?」
「ええ、あの声は……うぅ……」
ステラが言い淀む。悲しんでいるようだ。めったに見ないステラの姿だ。今の鳴き声にはそんな深い意味が……?
「お腹を空かせていますね……」
「……いや、お腹を空かせても、ああはならないような」
これまで野生のコカトリスとは何度も接触してきた。しかしそこでも、
「ぴよ!」(お腹が空きました!)
くらいだ。
しかしステラはよよよ……と哀れみの視線をコカトリスに向ける。
「とてもお腹が空いているのです……」
「そ、そうなのか?」
草をかき分けていくと、ついにコカトリスの姿が見えるようになった。2メートルを超えるビッグなコカトリスだ。
「ぴよ! ぴよ!」
ゆっさゆっさ。
野生のコカトリスは、一心不乱に木を揺らしていた。俺たちのことは完全に目に入っていないようだった。
木は揺さぶられるごとに、葉をぱらぱらと落としていく。それをコカトリスはシュシュッとキャッチする。
「ぴよー」(ふー、やれやれ……)
もしゃもしゃ。
コカトリスがその葉を食べる。すると少し落ち着いたのか、コカトリスの言葉の意味がわかるようになった。
「ぴよー!」
コカトリスが再び、木を揺らす。……さすがにちょっとご飯をあげたくなってきたな。
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