749.第1層へ(意外と自然に慣れてない子ども)
第4層から第1層へ。地上への帰還は順調だ。
途中、いくつかの魔物――大体が氷かキノコの魔物だったが、一蹴しながら進む。これは慣れも大きいな。
それにマルコシアスも役に立ってくれた。
「わふふ。歩くキノコの匂いが近付いてくるんだぞ!」
どうやら一度遭遇したキノコの魔物の匂いは、ちゃんと把握できるらしい。薄暗くて壁などで視界の悪い第3層では、ありがたい。さすがのステラも、そこまでの能力はないしな。
コカトリスも嗅覚は悪くないが、キノコの魔物と普通のキノコを区別しない。食べられそうなら、つまんで食べるだけなのだ。
というわけで、あっという間に第1層だ。着ぐるみの中にいる、ディアとマルコシアスに俺は呼びかける。
「ここからは歩いてみるか?」
「ぴよ! いいぴよか?」
「ああ、もう危険はないしな」
長時間、着ぐるみの中で窮屈な思いをさせたからな。休憩地点で外に出てたとはいえ、安全優先で身動きは制限されていた。
「わふ。じゃあ、出るんだぞ!」
「歩いて帰っちゃうぴよ!」
というわけで、ディアとマルコシアスをそっと草の生い茂る地面へと置く。
「ぴよ……」
「ディア、どうですか?」
周囲はススキに囲まれ、青空はかなりまぶしい。所々の樹木がなければ、本当に広大な原っぱだ。
「……草が高くて、よく見えないぴよ」
「わふ。思ったより草がデカいんだぞ」
「地面もごつごつして、歩きにくいぴよ」
「石が邪魔なんだぞ」
うーむ……村は手入れされているからな。村を走る道は馬車や荷車が通るので、徹底的に平坦かつ石を取り除いている。
雑草も、ドリアードたちが完璧に片付けているからな。畑に侵入させないという、ドリアードの固い意思があるのだ。
ステラが俺にごにょごにょ耳打ちしてくる。
「意外と自然そのままの環境には慣れさせていませんでしたものね……」
「そうだな……。盲点だった」
村の森も、魔物が出現するからディアとマルコシアスは立入禁止だ。本当に自然そのままには触れさせて来なかったかもしれない。
ナナがぴこぴこと羽を動かす。
「ま、ふたりなら追々慣れていくでしょ。手に乗せて運んだら?」
「ぴよ! かあさまと一緒に帰るの、いいぴよね!」
「わふ! 行きは父上とだから、帰りはそうするんだぞ!」
「そうですね……! ここにはぴよちゃんしかいませんし!」
バットは当然持てないが、もう大丈夫だろう。ということで、ステラがディアとマルコシアスを抱えながら進むことになった。
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