748.雪結晶と泉の最後
図鑑で見た鏡面の雪結晶と同じ輝き、形の石。これこそが目当ての品物なのか。
「今、ステラの手にあるのが鏡面の雪結晶か?」
「はい、そうです……!」
見守っていたナナも頷く。
「うん、間違いないね。こんなに魔力の純度が高くて凝縮してるだなんて……」
「確かに凄いな……」
魔力を持つものは魔力に敏感だ。逆に魔力を持たない者は大して魔力を感じない。
その俺にとっては、まさにびりびりとした魔力を感じる。
「わふー。これがナールの欲しがってたやつなんだぞ?」
「ああ、これで天秤が直せるらしい」
「ぴよよ! よかったぴよね!」
仕組みとしては確か、この雪結晶を通して周囲の魔力を分析するとか……だったか?
実際の重さではなく、魔力の純度を測定してなんとかかんとか……。
「ウゴ、すぐ見つけられて良かったね!」
「そうだな、第4層を駆け回らなくて済んだな……」
最悪の場合はこの第4層で野宿するつもりだったしな。しかしこれなら今から戻れば、なんとか大丈夫そうだ。
「ふーむ、しかしやはり鏡面の雪結晶の入手は非常に手間がかかりますね……」
レイアが考え込んでいるところに、ナナがぽむぽむと肩を叩く。
「暇だったら僕が手伝うよ。これくらいの純度なら僕の故郷でも買い手は見つかるだろうし」
「おおっ! ナナが引率してくれれば心強いです!」
「今回、ステラに同行して取り方はわかったからね。しっかり準備すれば大丈夫」
泉でぱしゃぱしゃしていたコカトリスはというと、最後の輝きをうつ伏せで堪能していた。
「ぶくぶくぶく……」(ああ、そろそろ消えてしまう……)
「ぶくぶく……」(綺麗なものほど、消えるのもはやめ……)
そんなことをしている間にもコカトリスの反魔力によって泉はどんどん散っていき、ついには完全に消え去った。
残されたのは固そうな雪の上でうつ伏せになっているコカトリスたちだ。
「……ぴよちゃんは満足しましたかね?」
「まぁ、散々遊んだ気はするが……」
例えるなら小さなビニール製プールに飛び込み、中の水を全部庭にぶちまけたみたいな。
少しの間にも、見守っているとコカトリスがぱっと立ち上がる。
「ぴよっ!」(遊び終えたっ!)
「ぴよよー!」(よし、終わりー!)
どうやらコカトリスも遊び終わったみたいだ。ちょうど、なんだか雪も風も強くなってきた気がする。
そろそろ地上へと帰り始めよう。
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