746.きらきらと光る泉
そうして候補地のひとつめに到着する。きらきらと光る泉だな。不思議なことにまったく凍っても、雪で覆われてもいない。
「ぴよー! きれーぴよー!」
「わっふふー。ぴかぴかなんだぞー!」
「これってなんでぴよ!?」
「純粋な氷の魔力だな。しかし絶妙なバランスで水のような状態になっている」
「ウゴ? 水とは違う?」
「ああ、水のような形だが……」
やってみたほうが早そうだ。俺は着ぐるみの手に枝を生み出す。ごく普通の乾燥した枝だ。
そのままきらきらと光る泉に落としてみる。
ちゃぽん。
枝はたちまち、魔力に包まれて凍りつく。やはりこうなるか。
「なるぴよ。凍っちゃったぴよね」
「興味深いんだぞ」
ダンジョンの外で、こうした魔力溜まりが存在する時間は非常に短い。すぐ大気中に拡散するか、精霊のような魔物に変わるだろうから。
だが常に魔力と氷あふれるこの第4層では、こうした純粋な魔力として長時間存在できるわけだ。
「この泉はばらばらに離れていますが、元を辿ると全部がひとつみたいなものなのです」
「なるほど、だからこの候補地――どれかの泉に鏡面の雪結晶があるということだな」
「はい、この泉がどこにもないときは、そもそも今ないはずです。出直しになりますね」
「ウゴ……じゃあ、幸先はいいね!」
「そうだな、見通しはあるわけだが」
しかし、どうやって泉の中を探す?
明らかに入れるような雰囲気ではないが。いや、ステラなら……。
「では、雪をどんどん泉に入れていきましょう! バランスを崩せば泉は消えます。鏡面の雪結晶なら、問題なく残りますので!」
「……入ったりしないのか?」
「魔力がもったいないので、しませんね……。最後のふたつくらいなら、その方法でもいいですけれど」
ナナが羽をぴこぴこさせる。
「泉の魔力が邪魔して、鏡面の雪結晶がどこにあるかわからないしね。泉を消したほうが早い」
ナナでもわからないのか。じゃあ、コカトリスが泉に入ったとしても成果は期待できないな。そうした繊細な鑑定作業は……まぁ、向かない。
と、すでにコカトリスたちは興味の赴くまま、泉に脚を踏み入れようとしていた。
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