742.ダイブダイブ!
ウッドを乗せ、うつ伏せのコカトリスはやる気に満ちあふれていた。
「ぴよ……!」(いくぜ、風の向こうへ……!)
他のコカトリスはゆっくりとうつ伏せコカトリスを押している。
「ぴよよー!」(れっつごー!)
ずりずり……。ウッドとコカトリスは崖に向かって進んでいく。
「ウゴ、覚悟はもう決まったよ……!」
「おお……無茶はしないようにな……」
「ぴよ! おにいちゃんなら、大丈夫ぴよ!」
「わふふ。きっと風を楽しめるんだぞ」
……ウッドの妹のふたりはものすごいポジティブだった。わかってはいたが……。
ナナが羽を掲げ、ふにふにさせている。
「風はちょうど追い風……。今ならオッケーだね」
「ウゴ、逆風だとまずい?」
「そりゃあ、まぁ……滑るときに逆風だと崖に当た――こほん、接触する可能性があるからね」
「当たると接触って意味違うぴよ?」
「わふ。ほとんど同じだぞ」
うむ……訂正できていないな。
「ウ、ウゴ! じゃあ、はやく!」
「ぴよー!」(いっくよー!)
コカトリスに押され、ついにうつ伏せコカトリス(ウッド乗せ)が発射された。
つるるーーーーー!
急角度で崖を疾走――もとい、滑落していく。
「ウゴゴゴーー!!」
「ぴよっぴー!」(てぇーい!)
くるくるくる!
コカトリスは華麗に回転しながら落ちていく。前世でスノボのプロがしていたような……つまりそれくらいの勢いがある。
だが、さすがコカトリス。安定感は抜群だ。そのまま数十秒で崖下まで到着する。
ぴよー!
崖下から興奮気味のぴよ鳴き声が響く。ウッドの紐がステラによって外された。ウッドがこちらに向かって手を振る。
「どうやらちゃんと到着したようだな」
すぐさまステラから、安全であるという緑の狼煙が上がってきた。
「さて、では次は私ですよ!」
同じくうつ伏せのコカトリスに固定されたレイアが興奮気味に話す。
「ぴよ!」(みんなでいこーよー!)
「ぴよよー!」(はーい!!)
残ったコカトリスたちが全員、うつ伏せになった。どうやら一度に行くつもりらしい。
「では、いってきまぁぁぁ――」
「ぴよーー!!」(とりゃあああ!!)
「ああああーーー!!」
レイアが別れの挨拶を済ませる前に、コカトリスたちは無情にも崖へとダイブしていった。
「ぴよ。さす大丈夫ぴよ?」
「わふふ。新しい使い方なんだぞ」
「ぴよっ、あたしは常に進化するぴよ!」
「ふむ……もう下に到着したようだ。ちゃんと緑の狼煙が上がっているから、問題ないのだろう……」
さて、そして残るは俺たちとナナになったわけだ。
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