741.固定しました
ナナの用意したロープでレイア、ウッドがコカトリスの背中に固定される。もちろん別々のコカトリスにだが。
レイアはすりすりとコカトリスの背中に頬を寄せていた。
「ふぅ……固定がキツめですが、ぴよちゃんの体温を感じることができるので、これはこれで……」
「ぴよちゃんの背中は隠された楽園と言われてますからね」
「そうなのか……」
「ふわふわなのに、ちょっとだけ固めなのがいいのです!」
ウッドの身長はコカトリスよりも高い……ので、やや特殊な固定方法になっている。
具体的にはうつ伏せのコカトリスの上にうつ伏せのウッドなわけだが……。
「ウゴ……これ、大丈夫?」
ロープを何重にも巻き付けているナナが自信たっぷりに言い放つ。
「固定は完璧だよ。あとはこのコカトリスを発射――じゃない、前進させればオッケーだ」
「ウゴゴ、発射って言った?」
「まぁまぁ、意味に大した差はないよ」
コカトリスは体力も筋力もあるのでウッドを乗せてもびくともしない。むしろ未知のダイブに心躍らせているようだった。
「ぴよ!」(飛ばしていくぜ!)
「ウゴ……ゆっくりめに!」
「ぴよよ!」(重力と角度の命じるままに!)
ま、まぁ……コカトリスもウッドを危険には晒さないだろう。ちょっと速度が出るだけだ。
ステラがバットを構え、崖のふちに立つ。
「では、まず私が下に行って安全確保をしてきます!」
「わかった、そのあとは狼煙で頼む」
「はい! では!」
ぴょーん。
そのままステラは一切のタメもなく、崖下にジャンプしていった。
「わふ。気軽に飛んだんだぞ」
「ステラだしな……」
見ると、ステラは崖下に着地していた。ぶんぶんと身体を動かして雪を払っている。
すぐに緑の狼煙も上がってきた。冒険者の符号で「ここは安全」という印だ。
「じゃあ、少しずつ降りていくか」
「そうだね。まずはウッドからかな」
「ウゴ……2番手……!」
「わふ! 頑張るんだぞ!」
「ぴよよ! 着地が大切ぴよ!」
……この体勢でウッドにできることは、風を身体に受けるくらいなのだが。
前世でジェットコースターに乗った恐怖を俺は思い出していた。
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