740.崖から
「……こういう場合はどうするんだ?」
「遠回りか滑って降ります」
「わふ。正確に言うと『落ちる』な気がするんだぞ」
崖は下まで数十メートルはある。マルコシアスの言葉は正しい。
「ぴよ! かあさまはどうしてるぴよ?」
「このくらいなら降ります」
「ウゴ……かあさんなら、まぁ……」
「ステラなら余裕だろうが……」
ナナがぴこぴこと羽を動かす。
「大丈夫、このぴよ着ぐるみなら造作も問題もなく下まで降りられるよ」
「ウゴ……俺やレイアはどうしたら?」
ナナがすすっと背後のコカトリスたちを羽で指し示す。
「ぴよー」(これはなかなか角度があるねー)
「ぴっぴよ!」(限りなく直角だ!)
……まぁ、これしかないよな。
コカトリスに紐で固定し、そのままダイブだ。
「わふ。ばびゅーんでもいい気はするけど、このダンジョンだと危険が危ないかもなんだぞ」
「ふむ……着地点をもし魔物に狙われたらな……」
今回、ザンザスのダンジョンでばびゅーんを使わない理由だ。ぎゅうぎゅう詰めの状態で飛んで、着地場所で戦闘が起きたら危ない。
ナナがポケットをごそごそと漁り、ロープを取り出す。
「少しの間、目を閉じて振動に耐えていれば終わるから」
「振動はともかくとして……目は開けていますよ!」
予想通りレイアはノリノリだった。ウッドもコカトリスのほうを見て、少し安心した顔になっている。コカトリス・ボディの信頼性を思い出しているようだ。
「ウゴ……まぁ、大丈夫だよね……」
「下は柔らかいですし、ウッドなら無傷かなと……」
ステラが崖下を覗きながら頷いている。ウッドの物理防御力は極めて高い。実際、この崖から飛び降りても大丈夫だろう。
「しかしこの崖を降りるのか……」
ばびゅーんだとか海へ潜るのとはまた違い、本能的な恐怖が拭い去れない。
「ぴよ! わくわくぴよね!」
「わふ! どきどきだぞ!」
だがディアとマルコシアスはアトラクション感覚で楽しみにしていた。俺だけ躊躇していても仕方ない。
俺は歩いてきた雪原をちらと振り返る。特に変化なし。魔物の気配はない。
俺は確信している。もし今、後ろから魔物がやってきたら……ステラは俺を担いで、崖から飛び降りるだろう。
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