723.のんびり休憩
丸々と大きいコカトリスが4体、川をすすっーと仰向けに浮かびながら流れていく。
どんぶらこ、どんぶらこ。
水流でゆらゆらと回りながらだ。前世でのスーパーボールすくいの屋台が脳裏に浮かぶ。
ステラが頷いている。
「ふむむ……どうやらこの下流に大きな池があるみたいですね」
「そうなのぴよ?」
「ただ流されているわけじゃない、ということなんだぞ?」
「ええ、ヒールベリーの村でもぴよちゃんはため池に浮かびますが、こちらのぴよちゃんは移動手段でこうして流れてくるので……」
……。
つまり下流の池やらに向かうのに、歩くよりもこうして流れていくのを選んでいるわけか。
「すやー、ぴよぅー」
「むにゃむにゃ、ぴよー……」
しかも流れてきているコカトリスたちは気持ちよさそうに寝ていた。器用なものだな。
「ぴよ……」(うーん、優雅……)
「ぴっよ」(これぞスローライフ)
レイアも心配している様子はなかった。
「ここではたまによくある光景ですね。特に問題はないかと」
「ふむ、それなら先に進もうか」
「ぴよ。べんきょーになったぴよ!」
「わふふ、圧巻だったんだぞ」
「ウゴ、前は見なかったから見れてよかった!」
というわけで俺たちは改めて休憩地点へと向かった。川を上って一時間くらいだろうか。ススキが幅広く途切れている草地に到着する。
ナナがお腹をごそごそしている。
「ほわほわシートを、よいせーっと」
ナナが取り出したのはキャンプで使えるマジカルなシートである。触り心地抜群で、もちろん全員が寝転がることができるくらいだ。
「もし飲み物がほしい人はどーぞ。簡易湯沸かし器とコップもあるよ」
ナナは相変わらず用意がいい。粉末の紅茶を淹れ、のんびりとダンジョンの中を堪能する。
ディアとマルコシアスも着ぐるみから出て、シートの上をぐるぐると歩いていた。
「わふー。穏やかなんだぞ」
「ぴよ。思ったよりも静かぴよね」
「ああ、そうだな。こう、もっとザンザスのコカトリスと出会うかと思ったが」
しかし、これはこれでいいのかもしれない。ザンザスのコカトリスには彼らのペースというものがある。たまたま、合わなかったというのもあるだろう。
それに帰りにまたここには通りがかるしな。
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