714.ささやかな景品
大道芸人ぴよも困惑しながら、ぽぷほふと羽を鳴らしている。
「えーと、すごいですね……! こんなにできる人は初めてです」
「ぴよ!」(えっへん!)
大道芸人ぴよが小さな紙包みを玉乗りしたコカトリスに渡す。
「こちらは……参加賞です。干し木いちごになります」
干した木いちごはすっぱめだが、よく食べられているお菓子だ。玉乗りの参加としては妥当だろう。
「では、もういちど勇敢でバランス感覚溢れる謎のぴよに盛大な拍手をー!」
わぁぁぁーっと見物人から再度拍手が送られる。
「さて、次に乗りたい人はおりますかー? 記念や思い出にぜひどうぞ!」
大道芸人ぴよが呼びかけたところで、俺たちも場を離れる。ナナがやれやれとした目で見ていた。
「完璧に勘違いしてたと思うよ」
「話をするタイミングがありませんでしたね。あとで説明する人を送っておきましょう……」
レイアがうんうんと頷いている。
「組合に聞けばすぐわかるでしょうし」
「ほう、大道芸人にも組合があるんだな」
ザンザスのガイドや本には特に触れられていなかった気がするが。
「冒険者とは違い、非公式でそこまで組織化はされていません。でも玉乗りのような大道具を使うなら、届け出はしているはずです」
ナナがぴこぴこと羽を動かす。
「往来で事故が起きたり渋滞が起きないよう、ザンザスには大道芸人組合もあるのさ。観光都市にはだいたい、似たような組織があるね」
「なるぴよ。べんきょーになるぴよ!」
「わっふ。アクシデント防止は大切なんだぞ」
大道芸人にも組合があるのは知らなかったな。俺も勉強になる。
「ぴよー……」(乾燥した木いちごっぽい……)
「ぴよよー」(食べるべきか食べざるべきか、それが問題だ)
コカトリスたちが紙包みを覗き込んでいる。どうやら今、食べるかどうかを悩んでいるようだ。
一応ダイエットでここに来たのだが、しかし……。
「ぴよ」(量も少ないし食べちゃうか)
「ぴよっ!」(さんせー!)
がさごそがさごそ、もちもちもち……。
コカトリスたちは紙包みに羽をつっこみ、干し木いちごを食べ始めた。やはり我慢できなかったらしい。
「ぴよっぴ!」(いい酸味!)
「ぴよよ!」(きてるよこれは!)
ウッドがその様子を見ながら、俺にこそっと伝えてくる。
「ウゴ、すぐ食べちゃったみたい……」
「ま、まぁ……どこまで保存性があるかもわからんし、あれくらいの量なら……」
大都市には誘惑も多い。コカトリスのたぷは一日にして減らず、なのだ……。
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