713.ボール乗りコカトリス
大道芸人ぴよがぴこぴこと羽を動かす。
「やる気ですね、では前にどうぞ!」
見物人も楽しみなのか「いいぞー!」「見せてくれー!」と声を上げる。
俺はその隙にステラに顔(着ぐるみ越し)を寄せる。
「……大丈夫なのか?」
「ま、まぁ……私もそばに付きますので。ぴよちゃんも乗り気みたいですし」
ぴよぴよ。ボールに乗りたいコカトリスとステラが前に出る。
そしてコカトリスがよじよじとボールに乗る……そこを大道芸人ぴよとステラが支えていた。
「実にいい着ぐるみですね〜……んん?」
「ぴよ?」
「ずいぶんふわもっこしているような……」
大道芸人ぴよも着ぐるみを身に着けている。もちろん羽の部分もで、そのせいでコカトリスに触れても気が付かないのだろう。
ぽよぽよのコカトリスは支えられ、ボールの上に乗る。
「どきどきぴよ」
「大丈夫なんだぞ?」
「身体能力は優れているから、大丈夫なはずだが……」
ボールの上のコカトリスがかっと目を見開く。
「ぴよー!!」(立ったよー!!)
その様子を見た見物人がやんやと歓声を上げ、拍手をしている。
「うまいじゃないか!」
「いいぞいいぞー!」
コカトリスはボールの上で足をぽにぽにさせ、バランスを取っている。
ぽにぽにぽにぽにぽにぽに。
「ウゴ、あれでバランス取れてるんだ……」
「落ちそうで落ちないな……」
その辺りはさすがコカトリスだった。見物人も不審には思っていないようだ。
……大道芸人ぴよは頭を傾げ、不思議そうにボールに乗るコカトリスを見ていたが。
「ややっ、本当にお上手ですね! もしかして経験あったりとか……?」
「え、ええ……ま、まぁ……少しだけ……」
ステラが目を泳がせながら答える。
「ぴっぴよー!」(うえーい!!)
「すごいぞー!」
「もっとやれー!!」
コカトリスに言葉の意味はわからないだろうが、見物人が楽しんでいるのは理解しているのだろう。しばらくぽにぽにぽにとボールに乗り、観客を沸かせた。
そしてすちゃっとボールから飛び降りてポーズを決める。
「ぴよよーー!!」(楽しかったーー!!)
パチパチパチパチ!!
まさに万雷の拍手がボール乗りのコカトリスに送られたのであった。
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