709.最後のコーナー
そんなこんなで中庭での昼食を終えた。
「ぴよ!」(お腹いっぱい!)
「ぴよよー!」(まんぷくー!)
コカトリスたちも満足そうにしている。そこへナナが俺にこそっと聞いてきた。
「僕の記憶が確かなら、コカトリスたちはダイエットに来たんじゃなかったっけ?」
「まぁ……それはそうなのだが……」
ダンジョンではここほどの食料はない。食い溜めということにしておこう。
それから俺たちは博物館の2階に案内された。ここは主に歴史的な品物の展示物だ。
俺の腹ポケットにいるディアがふんふんと熱心に見ている。
「ぴよ……。かあさまの使っていた剣、槍ぴよ……」
説明にはそう書いてあるが、どれもボロボロだ。剣はぽっきり折れ、槍は柄の半分しかない。
マルコシアスが同情的な視線を向けている。
「ほろり、母上のパワーに耐えきれなかったんだぞ」
「残念なことでした……」
ステラも神妙な顔をしている。だが剣も槍もミスリル合金で作られた、かなり強固なモノのように見えた。それが完璧に壊れている……。
「ウゴ、でもバットは大丈夫なんだよね?」
「まさに私にぴったりですね……! やはり金属より木ですよ!」
まぁ、多少はしなる分いいのかもしれないが……。あとはエルフだから木のほうがいいのだろうか?
「そういえばかあさまは弓は使わないぴよ」
「弓は矢がなくなるとダメですからね」
前にちらっと見たことはあるが、ステラは弓も百発百中である。しかし本人の言う通り、素手でドラゴンの鱗も砕くのだ。矢の制限があること自体が好ましくないのだろう。
「ちなみに現在のザンザスの冒険者の剣術、槍術、弓術、斧術、格闘術はステラ様のを基本にしています」
「そうなのぴよ!?」
「冒険者の中ではかなりメジャーな流派ですよ。ステラ様式戦闘術ということでまとめられています」
「すごぴよ……!」
ディアが改めてステラを尊敬の眼差しで見上げる。ステラはやや照れているようだった。
「村の人たちに教えていたものが、まさかそこまで残るとは……」
ステラの戦闘術は、実は極めて防御的だ。まずは防御と見切りを重視し、その上で攻撃に移る。そのため普段の魔物戦でもステラは攻撃を受けることがない。
対人戦をほとんど考慮しておらず、人間サイズではない大きな魔物や小さな魔物に対して特化している。そのため冒険者にとっては人気の流派になっていた。もちろんステラにあやかろうとする者も多かったと思うが。
同じ冒険者のナナが羽をぴこぴこさせる。
「動きに無駄と躊躇がないよね」
「そうですね、多くの魔物は人と同じ動きをしません。そこで素早く動いて対処できるように、と工夫していましたので」
「なるぴよ! べんきょーになるぴよ!」
ディアがふんふんと頷いている。
俺たちはそれからザンザスゆかりの品を見て回った。もちろんステラが関わったモノも結構多い(しかしステラいわく、半分くらいは自分の預かり知らないモノだそうだが)
その他のメインは歴代の議長が使っていた杖やら冒険者ギルドのマスター愛用の武具とかだな。
「格好いい杖なんだぞ」
マルコシアスも歴代議長の杖を楽しそうに見ている。この杖は漆黒で持ち手の部分は銀、今ではほとんどない珍しいデザインだ。
友好都市から送られた品々も多い。やはり武具が大半を占めるわけだが……ん?
距離的に最後らへんのコーナーの入り口は、なんだか雰囲気が違う。レリーフに気合いが入っていた。なになに……。
『ぴよグッズの歴史』
そこにはゴツゴツして明らかに鉄板まみれのぴよ着ぐるみがどーんと置かれていた。
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