706.ぴよ番人
次の展示物は人間たちが戦争していたり、魔物と戦っている絵のシリーズだ。
「ここから数百年間、ザンザスは争いの中にありました。ときには人間同士、あるいは魔物の大群と戦い続ける時代が続いたのです……」
「なんでぴよ?」
ディアの疑問にステラが答える。
「ザンザスのダンジョンは非常に有用な資源なのです。ここのダンジョンに深く潜った冒険者は、強大な武具の素材と大金を得ることができました……」
「ウゴ、たくさん色々なものがあったもんねー」
ウッドがかつて第2層まで潜ったことを思い出しているようだった。
今では他にもたくさんの鉱山や素材の採集場が見つかっているが、当時、この国ではザンザスが様々な魔力素材の一大産地であった。
この国で、というのもまだ正確ではないが……500年前だと、この国はまだ十を超える小国に分かれていたはずだ。これもザンザスを巡る争いになった原因である。
小国は互いにザンザスのダンジョンの独占をもくろみ、しばしば戦いを引き起こしたのだ。
ナナが羽をぴこぴこさせる。
「あとはダンジョンの特性もね。ダンジョンは魔物を引き寄せる……」
「その通りです。今はしっかりと魔物を討伐し、ザンザス市内を危険に晒すことはありませんが……古の時代には難しいことでした」
外の魔物がダンジョンにたどり着くと、その魔力を吸収して強大化する。元々が強力な魔物だと手がつけられず、大災害に発展することもある。
このせいでこの国は数十年前に王都を失い、今も聖域として奪還を狙っている状態なのだ。
もっとも、ザンザスではそこまで酷いことにはなったことがない。というのも、ザンザスのダンジョン第1層にはコカトリスがいるからだ。
魔物が外から来ても、コカトリスたちが魔力を吸収する前に退治するか、追い出してしまうのだ。
……というわけで次の絵は、ザンザスのダンジョンの前で巨大なフラワージェネラルにタックルをして、追い払っているコカトリスたちである。
「その多難の時代にあっても、ぴよちゃんはザンザスの最後の番人でした。ザンザスが決定的な破滅を迎えなかったのは、ぴよちゃんのおかげといっても過言ではありません……!」
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