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【4月コミカライズ発売!】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


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705/836

705.ザンザス氏

「想像によるしかなかったので、いささか本人と相違があるのは仕方ありません。とはいえ歴史的には大いに価値がありますので、どうかご容赦を……」

「い、いえ……廃棄しろなんて言いませんので……」

「ぴよー。これも歴史ってことぴよ?」

「わふ。まさにそうなんだぞ」

「奥が深いぴよ!」


 なんだか似てないレリーフで学びを得たらしい……。


 俺たちはさらに奥に進む。ここからはザンザスの歴史をいちから振り返る展示だな。


 まずあったのは長い髪とヒゲを蓄え、杖をついたお爺さんの銅像だ。このお爺さんが勇ましく魔物と戦っている絵もいくつかセットで飾られている。


『解放者 ザンザス氏』


 とレリーフには書かれている。


「ウゴ、ザンザスを魔物から救ったひとだ」

「歴史書でも必ず最初に出てくるな」


 ザンザス氏はこの辺り一帯の魔物を一掃し、初めて人間の住居を築いた伝説的な冒険者だ。ザンザスという名前も彼に由来している。


 レイアが補足する。


「歴史的には800年前から700年前のことと考えられています。もっとも実在の証拠はほとんどありませんが……」

「私の生きていた頃でさえ、神話的な人物でしたからね」


 ディアがぴよぴよしている。


「ぴよ? つまりどーいうことぴよ?」

「いなかったかもしれない、ということなんだぞ」

「ぴよ……。じゃあ、なんで銅像と絵があるぴよ?」

「いたのかもしれない、ということなんだぞ」

「ぴよ……これも想像ぴよ?」

「まぁ、そうだな。でもかつて偉大な冒険者がいた、というのは真実かもしれない」


 歴史書によると様々な貴族家の古文書にも、ザンザス氏の名前はほとんどないらしい。そのためどこかの貴族家の出身である可能性は低く、冒険者か様々な人物の伝承がミックスされた存在とされる。


 今のレイアの言葉でもそうだが、ザンザス氏は市中において特に神聖視はされていない。別に非実在説をとったとしても、ザンザスの市民は少しも不快に思わないだろう。


 前世が日本人の俺からすると、ザンザス氏の扱いは桃太郎や金太郎に近い。おとぎ話の英雄なのだ。


 ナナが羽をぴこぴこさせる。


「確か、彼はこのザンザスにも長くはいなかったんでしょ?」

「そうですね、ザンザス氏は住居の建設が終わるとまた冒険の旅に出たそうです。伝説では東や南でも活躍したとか」


 ザンザス氏の伝説はその終わりも確たるものはない。東で安らかな最後を迎えたとも、南に故郷があってそこに帰ったとも……。わかっているのは、ザンザス氏の確かな子孫は誰もおらず、関わりのある貴族家もないということだ。


 そこでコカトリスたちが後ろでなにやら、こそこそとぴよぴよしている。しかも頭を羽で押さえつけながら……あれはコカトリスの記憶を絞り出すポーズのはずだが。


「ぴよぴよ」(これってあのお爺さん?)

「ぴよ……」(あの大食いのお爺さんのことかもしれない……)

「ぴよっぴよー」(あのお爺さん、魔力すごかったもんねー)

「…………」


 まさかザンザス氏と面識があるのか?

 いや、コカトリスの寿命はないとされているから、その可能性もありうるが……。


 俺はそっと隣のステラの顔を見た。しかしステラはふるふると首を振る。


「今は黙っておきましょう」

「……いいのか?」

「ぴよちゃんの記憶だけで歴史書を書き換えるわけにもいきません。人違いかもしれませんし……。あとでまとめてレイアに渡し、判断は彼女に任せましょう」

「そうだな……」


 うーむ、その通りだ。物証もないのに、こんな話を始めたら大変なことになるしな……。


 だがステラもわかっているはずだ。コカトリスは昔のことを覚えていない。だが、物覚えが悪いわけでも忘れっぽいわけでもない。その証拠に、思い出したことは極めて正確なのだ……!


 だが学会に発表しようにも、根拠がコカトリスの昔話だけでは理解は得られまい。これも事実なのだ。


 レイアは慣れた様子でガイドを続けている。


「さて、こうしてザンザス氏によって最初のザンザスというべき村が建設されましたが……ここから多難の時代が始まります」

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「実在の証拠はないが、歴史書には必ず出てくる」レベルなら桃太郎や金太郎よりむしろ神武天皇やヤマトタケルノミコトなのでは?さすがにおとぎ話と一緒にするのは可哀想な気が…
[気になる点] “白髪で杖をついたお爺さんの銅像”って、銅像じゃ髪色までは分からないと思う。でもディアがカワイイからヨシ!
[一言] ぴよに文字と記録の文化があれば おいしいとか楽しいとか眠いとかで 埋め尽くされてただろうきっと というかあの情報圧縮力で 意味がわからんことになる気が
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