701.郊外
それから少しして、全員がこちら側に到着した。この小さな郊外の丘からだと、ザンザスの街並みを見渡すことはできない。
それほどにザンザスの街は大きく、建物は高いのである。
「それじゃ、我は父上の懐に入るんだぞ」
「あたしも入るぴよー!」
ぴょいとマルコシアスとディアが俺の着ぐるみの腹ポケットに入る。ふむ、ぴったりだな。
ザンザスは人混みが凄いので、移動の際はこのほうが安全だ。これならそれほど目立たないしな。
ダンジョンの中では腹ポケットではなく、俺の着ぐるみの中になるが……。
「ウゴ、待ち合わせ場所はこのまままっすぐ?」
「そうですね。えーと、黄色い屋根の建物が目印……」
「あれだね。超目立ってる」
ナナがぴっと羽で指した先に、横長の色鮮やかな黄色い屋根の建物があった。確かにこれ以上ないほど目立っている。
「あそこはなにぴよ?」
「コカトリスグッズの出荷場所らしい。あそこからザンザス市内で作ったコカトリスグッズを集め、他に持っていっている」
コカトリスグッズは市内の様々な場所で作られている。それを集め、出荷しているのがあの黄色い屋根の建物だ。さしずめ物流センターといったところか。
「なるぴよ!」
「ぴよちゃんグッズはお家にもありますが、そうしたところを見るのは初めてですね」
「ウゴ、前回なかったよね?」
「最近作ったらしい……お、噂をすればレイアだ」
ザンザスの市街からレイアと冒険者の一団がやってきた。レイアはいつも通り頭にぴよ帽子を被っているな。
俺たちの側でコカトリスがこそこそぴよぴよしている。
「ぴよ……」(寒がりの人だ……)
「ぴよよ……」(ここでも寒いんだ……)
なんだかレイアに対する憐れみの視線を感じる。俺は前にディアの訳で知っているが、レイアはその辺を知らない。世の中には知らないほうがいいこともある。
「お待ちしておりました。どうぞ、市内をご案内いたします」
「ああ、よろしく頼む」
「本来であれば議会総出でお出迎えをし、盛大なパーティーを開くところですが、お許しください」
今回はお忍びだからな。ステラもいるが、そうした歓迎会の類はパスである。
ステラがほんの一瞬、嫌そうな顔をした。
「どうぞお構いなく……!」
「では、どうぞ。こちらは倉庫や工房が多く、人通りはそこまでありませんので」
しかしレイアは平然としている。まぁ、ステラのそうした性格はレイアもよくわかっているだろう。社交辞令というやつだ。
「探検ぴよー!」
「だっぞだっぞー!」
こうして俺たちはザンザスへと歩いていった。
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