693.トマトット中編
「じゃあ、もしかしてトマトコーヒー作れる?」
目を輝かせるナナにレイアが頷く。
「私の聞いたレシピは行商人のモノですが……」
「いいよ、いいよ。作れるならね(*´ω`*)」
すすっとナナがスライド移動し、キッチンのスペースを少し空ける。
「材料はそう、希少なものは使いません。コーヒー、レモン果汁、ブラックペッパー……あとはドライトマト」
レイアがごそごそとキッチンを漁り、トマトコーヒーに必要な品々を取り出していく。
もちろんあらゆるトマトの食べ方を極めようとしているナナはドライトマトも所持していた。
「ふむふむ……? そーいうのを使うんだ」
ナナは興味深そうに手を止めず様子を眺めている。
「まぁ、コーヒーを用意して材料を入れていくだけなんですけどね」
言いながらレイアは手際よく作業を進める。冒険者はサバイバルのために料理の技術も持っているのだ。もちろんレイアもプロ級の腕前である。
「ふんふんふーん♪」
「ご機嫌だねぇ」
「いえ、トマトの味わい方で新しい方法を伝えられるとは思ってなくて」
レイアはこれまでいくつものトマト料理をナナに披露している。しかし、そのどれもナナにとっては初見ではなかった。トマト専門家のナナの経験を超えることは難しいのである。
「そうだねぇ……どんな味になるか楽しみだなぁ」
そんな感じで夜ご飯の用意は進んでいく。トマトコーヒーもまもなく完成した。
「見た目には普通のコーヒーだね」
出来上がった夜ご飯をテーブルに並べ、ふたりが向かい合う。
ナナが作ったのは超濃厚トマト煮込みである。あぶったベーコンの切れ端も入っており、ちゃんとたんぱく質も摂取できる。
サラダはフレッシュトマトとレタスが輪になって飾られている。こちらはレモン果汁でさっぱりと。
「入れたモノはそれほど多くないですからね」
「ふーん……ま、そっか」
ナナが嗅覚に意識を集中する――しかしさすがにコーヒーの匂いに邪魔されて、トマトコーヒーを探ることはできない。
それがかえって好奇心を刺激する。
「飲んでみればわかるよね、じゃあ……」
「ええ、さっそく……」
「「恵みに感謝を!」」
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