682.ナナ参戦
それから少し後、ナナの工房。
カーテンを締め切った工房の中で、ナナ(着ぐるみなし)は作業をしていた。
「うーん……」
ぼんやりと魔力灯に照らされた作業台の上には、様々な器具が置かれている。
スパナ、ピンセット、油類……その他、整備用の器具がところ狭しと並べられていた。
ナナは数メートルの魔法具の槍をカチャカチャと整備している。
「よし、と」
肝心の着ぐるみはでろーんと作業台の横に吊り下げられていた。
整備の終わった槍をぐっと着ぐるみのポケットに突っ込む。
ごそごそ。
そしてまた別の魔法具を取り出す。今度はナナの愛用する純白の鞭だった。
「……うん?」
手を止めてナナが小さな瓶を見つめる。
そのラベルには『鏡面の雪結晶』と書かれていた。
しかし瓶の中身はほぼ空、白い粉が少しだけ底に残っているだけである。
「やば、もう足りない……?」
純白の鞭の整備には『鏡面の雪結晶』が欠かせない。前回はドワーフの国から取り寄せたモノで賄ったが……。
今回の整備に足りるかどうか、微妙なところであった。
「ナナ! どうですか、新作のぴよぬいぐるみですよ!」
どーんとレイアがナナの工房に突入してくる。その手には小さなぴよのぬいぐるみがあった。
手のひらサイズだが、作りは精巧。今度発売するコッカトニアシリーズの作品である。
「コスト的に苦労しましたが、やっと前進が――おっと? どうされました?」
「いやね……」
ナナはレイアに『鏡面の雪結晶』の話をした。
「奇遇ですね。ちょうどさっきまで、その話をしていたところですが」
「うん? そうなの?」
「どうやらナールもそれが必要なようで。今度、ザンザスへ採集しに行きます」
「へぇ、それは好都合だね」
そこでナナがレイアのぴよぬいぐるみを手に取る。
ふにふに。
なかなかの手触りである。材料、裁縫ともに申し分ない。
ぴよぬいぐるみの瞳がきらりと光る。
「なかなかいいじゃない」
「やっと量産化に近づきましたが……」
「裁縫道具で新しいのが必要なら、また作るよ」
ナナはときおりザンザスの裁縫道具なども制作していた。歴戦の着ぐるみマイスターであるナナは様々なスキルを持っているのだ。
「それは助かります! ぜひ!」
レイアがぱぁっと顔を輝かせる。
こうして、ナナもザンザスのダンジョンへ同行することになった。
ちなみにレイアの頭の上にはぴよ帽子があるんだぞ☆
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