678.ダンジョンの厄介さ
「なるほど……」
しかし4層はかなり危険で、冒険者の立ち入りも厳しく制限されていたはずだ。
具体的にはライセンスが必要で、事前に計画書の提出をしないといけないとか。
だが、これはナールも承知しているはずである。
「ふむ――直すには具体的にどうすればいい?」
ナールの表情がぱっと明るくなった。
「にゃ……! この天秤が動いているところを、父も見たいと言っていましたのにゃ。もちろん村の役にも立ちますにゃ」
ナールがふにっと手を上げる。
「様々な素材の価値を素早く測れるようになりますにゃ、特に天然物はぴったりですにゃ」
「その辺の目利きは難しいからな……」
例えば薬草や鉱石、レインボーフィッシュの鱗など……含まれる魔力の質や量で価値が大きく変わる。
ナールの目利きは長けているが、彼女と同程度の人材は――他にブラウンしかいない。
ステラの知識は数百年前で、現代の価値基準とは異なっている。
ナナは一般的な素材の価値にあまり興味がない。
魔法具なら並ぶ者はないのだが……。
というわけで、この天秤のような魔法具は是非とも活用したい品物である。
だからこそナールはこの話を出したのだろうが。
「よし、前向きに検討しよう」
「ありがとうございますにゃ!」
さらに俺は必要な素材をナールから確認した。
その日の夜、俺はこの話題をステラに話をした。
仰向けのステラの顔の上には……ディアが思い切り乗っていたが。
「ぴよぴよ……」
「あふあふ……なるほど……」
しかし話はちゃんと聞こえていたらしい。
「あふあふ……すみません、こんな体勢で……」
「いや、気にしないでくれ」
かくいう俺も、膝に子犬姿のマルコシアスを乗せて背中を撫でていた。
ぬくぬくと温かい、滑らかな絹のような触り心地……。
お互い様なのだ。
「ぴよ。ザンザスのダンジョンぴよ?」
「第4層はかなり厄介ですね。というより、ザンザスの場合は1層以外はほぼ厄介なのですが」
「ウゴ、本に書いてあった。状態異常が多いって」
「そうですね、3層から先は事前に色々と必要になります」
3層はキノコの楽園で、他にも毒のある植物が多い。解毒ポーションなしは今でも自殺行為だ。
4層は極寒であり、防寒装備なしでは1時間も耐えられない。だが魔物も出現するため、動きづらい防寒装備ではどうにもならない。耐寒ポーションみたいなのが必須。
うってかわって5層は灼熱の世界だ。耐熱ポーションがないと、これまた1時間で死ねるらしい。
「つまり下に潜るならたくさんのポーション類が必要、ということだな」
「わふふー。大変なんだぞ……」
一番最初にナールやアナリアがポーションを求めた理由はこれである。
「もしくはぴよの着ぐるみがあれば……!」
……うん?
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