671.ヴィクターの警告
ばびゅーん。
風魔法とナナ&マルコシアスの飛行を組み合わせればすぐに村へと戻ることができる。
とはいえ、何度か休憩は挟むことになるが。
砂漠から離れると景色はがらっと変わる。
砂しかない世界から、草木ある大地になるのだ。
「ここで少し休憩だな」
「ああ、わかった」
魔物の群生地ではないが、根絶地帯ではない。
無理はせず進むことにしている。
ステラとナナのほうは……少し後方だな。
すぐに合流するだろうが。
「ぴっぴよー!」(地面に草が生えてるー!)
「ぴよよー!」(食べ放題だー!)
「ぴよぴよぴよぴよー!」(もしゃもしゃもしゃー!)
砂コカトリスは降り立った瞬間、ダッシュで地面に伏せて草を食べ始めた。
「ふむ……砂漠育ちの砂コカトリスには、やはりご馳走のようだな」
「そうだな、食欲に忠実だ……」
それがコカトリスというものなのだろうが。
さすがに俺も慣れた。
「ちょっといいか?」
ヴィクター兄さんがちょいちょいと手招きする。
なんだろう、珍しいな。
俺はヴィクター兄さんの着ぐるみに頭を寄せた(俺も着ぐるみだが)
「何かあったのか?」
「実家のほうで少し厄介事が発生している。まだ詳細は言えないが……いざという時は、助けが必要かもしれない」
「……それは構わないが。無茶振りは困る」
「先に言っておくと、話が進めば断ることはできない。大元は王家からの話だからだ」
俺は少しのけぞった。
こんなことは……初めてだが、習わなかったわけではない。
「何だ、戦争でもするのか?」
「半分は当たっている。もっとも敵は魔物の群れだが。王家主導で大規模な計画が進んでいる。俺が知っているのは魔物学の博士だからだ」
「どうして俺に話したんだ?」
「ステラには招集がかかる、恐らくは」
「…………」
「だから先に話した。それだけだ」
「……わかった。ありがとう」
ヴィクター兄さんは俺から数歩離れ、砂コカトリスのほうに歩いていった。
ポケットからメモ帳を取り出すと、砂コカトリスのスケッチを始めた。
「やれやれ。静かに研究しているだけで、良いのにな」
「それは――俺も同感だ」
すぐにステラたちも空から降りてきた。
俺はこの話を、すぐにステラへ伝えはしなかった。
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