664.情けは人のためならず
人混みのせいで最初わからなかったが……そのスペースに近づいて担当者が見えてきた。
カカがこのスペースの主だな。
「ようこそ、君たちか」
「お疲れ様。俺たちも見ていっていいか?」
「もちろん。いくつか研究を並べてある」
カカのスペースも他と同じく、複数のパネルが設置されている。
今は俺たち以外にも10人ほどが見学中だな。
「わふー。精霊の生息地とサボテンの生育……ってあるんだぞ」
「ぴよ。サボテンが切って並べてあるぴよね」
「ウゴウゴ、色々と違いがあるのかな」
俺もパネルを読み進めていく。
どうやらこの研究は精霊の数によって、サボテンの生育にどんな影響があるかまとめたものだな。
ふむふむ……。
「なるほど。トマトと同じで、精霊の数が多くなると生長が少し早まるのか?」
「そう、水分が多い植物は影響を受けるようだ。ヴァンパイアの間では経験的に知られていたが、ある種のサボテンも同様らしい」
「ぴよ! のーぎょーに役立つぴよ?」
「魔力濃度と農業の関係は、まだまだ未解明な部分が多いからな……」
俺たちの場合はドリアード農法ともいうべき、特殊なやり方をしているのだが……。
あとはレインボーフィッシュの鱗を砕いて肥料にしたりか。
「ウゴ、でもサボテンもおいしかったよ」
「ぴよ! ステーキうまうまぴよね!」
「あれは良かったな。多少でも再現できれば……」
サボテン料理はさすがに俺の国では珍しい。
しかし逆に言えば、うまくやれば上客を掴んで独占できるかもしれない。
「本格的にサボテンを追求したいなら、冊子を渡そう。ついでにあそことあそこの学者に話を聞くといい。精霊にもサボテンにも詳しい学者だ」
「それは助かる」
「いいや、こちらこそ本当に助かったよ」
ふにっと差し出された羽を握り返し、俺たちはカカのブースをあとにした。
ふむ、思わぬ収穫だったな。
巻き込まれた形とはいえ、事件を解決したおかげだな。
そのまま広間を巡っていると……ナナの簡易なブースがあった。
そうだ、彼女は請われて急ぎブースを出展していたんだったな。
お読みいただき、ありがとうございます。







