661.塔の遺跡を後に
砂嵐の魔力は急激に霧散している。
俺たちは地下室の入り口を目指して降下していた。
高度が下がるにつれて砂の精霊は減り、石も落ちてこなくなる。
どうやら砂嵐から離れると魔力が大気と混ざり、危険もなくなっていくみたいだな。
「むしろ下のほうが安全だったか……」
「そのようですね……。下を向いても、砂漠や塔に打ちつけている様子はないですし」
ステラが地表をじっと見ながら答えた。まだホコリが多くて、俺からはあまりわからないが……。
だが、落下物がないならディアたちも心配ないだろう。まぁ、ウッドもいるしな。
風が吹いてだんだんと地表がはっきり見えてくる。
塔の位置がこれだと……どうやら地下室入り口にまっすぐ降りる感じだな。
ナナがぴよっと羽を動かす。
「あっ、ウッドたちがいるね」
「そうだな、こっちに手を振っている。良かった、何事もなさそうだな」
そのままひゅるる〜と俺たちは砂漠に着地した。
「ウゴ、おかえりなさい!」
「ただいま、問題はなかったか?」
「ウゴウゴ、大丈夫! ホコリくらいだよ!」
ウッドの背の後ろには地下室への入り口がある。
そこには……ぎゅむっと詰まり気味の砂コカトリスがいた。奥からレイアの声が聞こえてくる。
「んしょ……もうちょっとです!」
「ふれーふれーだぞー」
「入り口は近いぴよ! がんばるぴよ!」
「ぴよー」(ぎゅむむー)
砂コカトリスが身体を揺らしながら、徐々に動いている。
……完全に詰まっているわけではないようだな。
やがてきゅっぽんと砂コカトリスの身体が地下室から出てきた。
「ぴよー!」(だっしゅつー!)
さらに奥からはディアたちが出てきた。
「ぴよー! お外ぴよねー!」
「わふ、砂嵐が散ってるんだぞ!」
「本当ですね……!」
そこで俺たちに気がついたようだ。
ディアとマルコシアスがとててーとそばに寄ってくる。
「とうさま、かあさま! 大丈夫ぴよ!?」
「わふー。我らは問題なしなんだぞー」
俺とステラは顔を綻ばせた。
まぁ、俺の顔は着ぐるみで見えないが。リラックスしていることが伝わればいい。
「ああ、大丈夫だ。終わったよ」
「はい……! 砂嵐は消えます!」
「ぴよー! それじゃ……!」
ディアが羽をぴっとあげた。
「宮殿に戻るぴよー!」
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