651.ポッコン
「ど、どうしたの。そんな頭だけ……!」
「まさかダンジョンに無理やり突っ込んできたんですか!?」
ステラもナナもびっくりしていた。
当然である。魔力の流れによってできた入り口以外からダンジョンに入るのは無謀だ。
普通は無理だし、できたとしてもこういう風にハマってしまう。
「ウッドに手伝ってもらって、ぐりぐりと押し込んでもらったのだ。狙いはバッチリだったな」
「な、なるほど……」
風で運んで最後は無理やり……。
ファントムを倒しながらステラは少し身震いした。着ぐるみでなければ背骨が大変なことになっているだろう。
「それでどうして来たのさ」
「うむ。魔力が点打つように動いているのはわかっているか?」
「ええ、なんだかスピードアップしてるようですが」
「どうやらエルぴよたちが操作しているらしい。それで状況を見に来たのだが」
「それならこの真ん中の塔に作用しているみたいですね。壊そうかと思っていたのですが」
ステラが黒の塔に視線を向ける。
しかしヴィクターの頭の向きと微妙に合っていない。なので見えていなかった。
「ふむ……どうやら向こうの嵐、地下室と共鳴しているようだな」
喋りながらもステラたちは周囲のファントムを撃破していく。
そのうちに魔力の粒が不規則なリズムになってきた。
ダダダ……ダ……ダダ……!
「あれ? リズムがおかしくなってない?」
「……もうひとつの嵐が近づいてきたからですかね」
ステラが厳しい視線を彼方へと向ける。
「ふむ、ふむ……。向こうの嵐の魔力のテンポは……」
ヴィクターの着ぐるみヘッドがかすかに揺れる。それ以上は動かないようだった。
「よし、わかった。あとはエルぴよに頼もう。どうやら魔力のパターンを変える必要がありそうだな」
「破壊はどうするのですか?」
「おそらく見た目にもわかる変化が現れるはずだ。予測が正しければ」
「大丈夫かな……」
ナナがぴよっと羽をバタつかせる。
「コカ博士は専門家ですからね。おまかせします……!」
「よし。じゃあ……俺を叩いてくれ」
「はい?」
「つっかえているんだ。動けない。上から叩かれて出ることが前提なんだ」
「は、はぁ……」
「言うまでもないが、全力で叩かれると俺の身体が持たない。25%くらいでよろしく」
ステラはすたすたとコカ博士の前にくると、拳を握った。25%くらいの力で。
「えいっ!」
ポッコン!
叩かれたヴィクターはダンジョンから消え去った。
つっかえは取れたようだった。
ナナがぽつりと呟く。
「うーん。さすがコカ博士……」
ポッコーンだぞ!!!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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