642.祭壇の使い方
「ぴよ。もっと近づいてみるぴよ?」
「わっふ。それがいいかもなんだぞ」
俺はディアとマルコシアスに促され、祭壇へゆっくり近づく。
ごうんごうん……。
祭壇はガタガタ震え、ところどころ青く発光している。
「間違いない、魔力はここから……」
俺はもっと近づいてみる。そろりそろり。
「ぴよよ。魔力がバチバチぴよねー」
「わふ。この祭壇が中心なのは間違いないんだぞ」
「ぴよっ!」(あたしもそう思いますぅ!)
祭壇の形は壁画に描かれていた絵と同じだ。
ボタンがあって、これを操作するんだろう……。
「ディア、ちょっと通訳してくれないか?」
「ぴよ! おまかせぴよ!」
「ふっと思ったが、塔が壊れてなかった時代のことを砂ぴよは知っているのかな?」
ディアがぴよぴよと翻訳してくれる。
「ぴよー!」(ぼんやり覚えてるよー!)
「覚えてるみたいぴよ。でもぼんやり……ぴよね!」
うーむ。それを最初に聞いておけばよかったな。
コカトリスは長生きだ。
崩落した塔の前を知っているとは……。
しかし、ここからが問題だ。
うまく聞かないと砂コカトリスから記憶を引き出すことはできない。
ぼんやりしか覚えてないし。
以下、俺と砂コカトリスのやり取りである。
「そのときから砂嵐は塔で起こっていたのかな?」
「ぴよよ」(起きてたーと思う)
「塔の周りには他に建物はあった?」
「ぴよっぴよ」(なかったなぁー)
「塔ができる前は、砂嵐はどうだった?」
「ぴよー? ぴよよー」(えーとぉ? もっとバラバラに生まれてたー)
砂コカトリスが頭を傾げながら答える。
記憶を振り絞っているようだな。しかし、思ったよりもはっきり覚えている。
自分たちに直結することだからか。
「わふふ。なるほどなんだぞ……」
「ぴよ。マルちゃん、何か気がついたぴよか……?!」
マルコシアスは深く物事を考えるタイプではないが、頭の回転は早い。
「もしかしてこの塔が砂嵐を集めているかもなんだぞ。昔から、砂漠の魔力と雲を集めて――だぞだぞ」
「ああ、俺もそう思った」
それなら砂コカトリスに聞いた内容と符合する。
この塔は周囲の魔力を集めて適度に砂嵐を作り、発散させる装置だったのではないか。
それが塔が半壊して、ヤバいほど大きな砂嵐が発生されるようになったのが今なのではないかと。
「ぴよ。じゃあ、この祭壇は壊しちゃダメぴよね」
「そういうことだな。うまく祭壇を操作できればいいんだが……」
俺は祭壇をじっと見た。ボタンが多い。
壁画の内容は覚えているが、どう考えてもひとりで操作する装置ではないな。
ディアがちょっと身を乗り出す。
「ぴよ。ボタンの連打タイムぴよかっ!?」
……うん、そうなるだろうな。
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