634.どるどるぅー
俺のほうは壁画。ヴィクター兄さんのほうは祭壇と地面の下からの魔力か。
トマトとサボテン煮込みを食べながら作戦会議だ。
俺とステラがメモした壁画をヴィクター兄さんに見せる。
「その祭壇はこんな形だったか?」
「ん? いや――少し違うな」
「あれ? 違うのですか……!?」
ヴィクター兄さんが壁画のメモをくるくると回転させながら見ている。
「この壁画がマニュアルだとしても、このボタンやここの出っ張りがない。さっき見たから確かだ」
「ウゴ、そうだね……。塔の中で見たのと、形が結構違うよ」
マルコシアスとスプーンで食べあいっこをしながら、ディアが首を傾げる。
「もにゅもにゅ……。ぴよ、つまりどーいうことぴよ?」
「わふ。可能性はいくつかあるんだぞ。祭壇が他にまだあったとかだぞ」
「ぴよ! そーかもぴよ。賢いぴよね!」
マルコシアスの言う通りだ。
塔は崩れており、全てが昔のままではない。
壁画と祭壇が無関係な可能性もあるが、基本的な形はよく似ている。
かつては存在した祭壇が今はもうない――そういう可能性も当然あり得る。
ナナがトマト煮込みをスプーンでくちばしに突っ込みながら、
「んーと、他に祭壇はないんだっけ?」
ヴィクター兄さんが首を振る。
「ないな。調べられるところはこれまでにあらかた調べているはずだから、目に見えるところにはない」
レイアが少ししょんぼりしている。
「空振りだったかも……ですか」
「もう少し調べる価値はあるかもだが。魔力の動きも気になる」
そこで一心不乱にトマト煮込みをかきこんでいた砂コカトリスが、動きを止めた。
「……ぴよよ?」(……んー?)
何やら地面を見つめている。
「ぴよ……。地面の下がどるどるぅーしてるぴよね」
「どるどるぅーですか……。前よりも強くなっているのです?」
「ぴよ! 荒ぶって、荒ぶって……ぴよ」
ディアと砂コカトリスが同時に崩れた塔のほうを見上げた。
「うん?」
つられて俺たちも塔を見上げて――声を出す。
「……黒い雲だ」
いままで雲ひとつなかったのに、いつのまにか黒い雲が塔の上部を覆っていた。
さらに風が吹き込み始めている。砂がふわっと舞い上がり始めていた。
「魔力も……!」
ステラが厳しい目を雲に向ける。
それは俺も感じた。強い魔力が塔の上に集まり、また雲になっているのだ。
「ぴよよ」(とりあえず砂が入る前に食べ切ろう)
砂コカトリスは煮込みを食べるのを再開したが……これはまた砂嵐が生まれるということなのか?
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