614.嵐の中より
「ぴよぴよ」(はぐはぐ……)
「ぴよよー」(もっしゃもっしゃ)
とりあえず砂コカトリスたちにトマトを振る舞う。
「とうさまのトマトマトはどうぴよ? イケるぴよ?」
ディアがぴよっと砂コカトリスに尋ねる。
砂コカトリスはトマトを食べる手を同時に止めて、ディアへと答えた。
「「ぴよよー!!」」(とってもおいしー!!)
そしてまた、もしゃもしゃと食べ始める。
「ウゴ、とうさんのトマトおいしいって。よかったね」
「ああ、サボテンだけオーケーだとなんだか悲しいからな……」
俺にもささやかに意地がある。俺が生み出した野菜や果物はおいしい……と思う!
トマトを取られる心配がなくなったナナも、ほっと一安心しているようだ。
「ふぅ、危ない……。トマトのおいしさが知れ渡るのは嬉しいけれど、僕のトマトは天地がひっくり返っても僕のものだからね」
固い決意だな……。
……ドタドタドタ。
うん?
なんだか大人数が走り回っているな。宮殿全体が慌ただしい。耳を澄ますと怒号も飛び交っているようだし。
「急げ、急げー!」
「剣や槍じゃダメだ! 魔法使いがいる!」
他のみんなにも聞こえたらしく、互いに顔を見合わせる。
「わふ。なんなんだぞ? いったりきたりしてるんだぞ」
「ずいぶんと切羽詰まっていますね。どうしたのでしょう?」
「……なにかあったのは間違いないようだが」
俺は頭を軽く振った。
首筋の裏がぞわぞわする。魔力の嵐が一層荒ぶっている……そんな感じだ。
「ぴよ。なんだか羽がざわざわするぴよ」
「ウゴ、俺もなんか……落ち着かないかも」
「変な感じですね、わたしも同じですけれど」
「みんな、同じなのか……」
むむっ、そうなると……少し心配だな。
そこへカカがぽよぽよダッシュしながら、広間へと飛び込んできた。
ヴィクター兄さんのところまで一直線に走っていく。
「ああ、ここにいたか!」
「どうした、えらい慌てようだが」
ぴこぴこここ。ヴィクター兄さんが羽を動かす。
「慌てもするさ! 手伝ってくれ、宮殿が崩落したんだ」
「さっきの落雷か? しかし俺の風魔法は修繕の役には――」
しかしカカは着ぐるみの羽をパタパタさせて否定する。
「修繕じゃないんだ……! 砂嵐から精霊が生まれて侵入してきている!」
なんだって……!?
ついにバットの出番が……だぞ!?✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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