613.危機来る
「お目覚めですね……!」
「ぴよぅ……」(ねむねむ……)
砂コカトリスは起きるのも一斉なようだ。
もぞもぞと動き出している。
「ぴよ。雷うるさかったぴよ?」
「かもかもなんだぞ。もぐもぐ……」
「ウゴ、またお腹空いたのかな?」
「そうならまたサボテンを生み出そうか」
砂コカトリスはお互いに羽でぽむぽむしている。
俺たちはもぐもぐ……サボテンのステーキを食べていく。
やがて砂コカトリスたちが立ち上がり、頭をぴよっと動かし始めた。
「ぴよよよー……」(おいしい匂いー……)
「ぴよ、ぴよよ」(またお腹空いてきた)
「ぴよっぴー」(砂嵐から逃げるので、食べてなかったからねー)
砂ぴよはお互いに顔を向き合わせ……また一列になって広間を歩く。
……ナナのほうに向かって。
「えっ、ちょっと……」
砂コカトリスはナナの後ろに来ると、覗き込み始めた。
「ぴよー……」(じーっ……)
「ぴよよー……」(じじーっ……)
「ぴよっぴよー……」(おいしそー……)
砂コカトリスたちはナナのトマト料理を見つめている……。穴が開くほどに。
「ぴよ! サボテンじゃなくてトマトに興味津々みたいぴよね」
「わふー。サボテンよりもトマトがレアだったりするんだぞ?」
「それはあるかもだが……」
ナナは首を振り振りしながら、砂コカトリスを見ている。
「トマトだけは、トマトだけはダメだよ……!」
「やはりトマトは譲れないようですね……」
「まぁ、トマトなら俺が生み出せるからな」
ステーキを食べきった俺は立ち上がり、砂コカトリスの近くに移動した。
ぴこぴこ。
「トマトならここにあるからな」
俺は羽を差し出し、植物魔法でトマトを生み出す。
「ぴよー!」(なんだってー!)
「ぴよよー!」(また羽から出てきたー!)
砂コカトリスが俺の前にすすっと移動してくる。
「よしよし、並んで並んで」
「「ぴよー!」」(はーい!)
うむ、やはり砂コカトリスは礼儀正しいな。
ぴしっと並ぶ……。
ステラとレイア、ヴィクター兄さんがすすっと俺の周りに来た。
「ふふふ、わたしもお手伝いしますね」
「私も配りますよー!」
「もちろん俺も手伝うぞ」
そうしてトマトを配り終えると窓の外がピカッと光った。
「おっ、また――」
ドンガラガッシャーンー!!
これまでで最大の雷鳴が鳴り響く。
ちょっと飛び上がりそうになった。
ガラガラ、ズドドド……!
続いて何かが崩れる音が聞こえてくる。
「……近くというか、これは」
ステラが砂コカトリスの頬をふにふにしながら、耳を動かす。
「これは当たりましたね、宮殿に」
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