612.雷は近い
淡水貝のソテーを食べ終わると、いよいよメインデッシュだ。
大仰なワゴンに乗って皿が運ばれてくる。
「熟成サボテンのステーキ、マッシュルームと濃厚ガーリックソース……だな。これはおいしそうだ」
そうして俺たちの前に皿が並べられていく。
「ぴよよ! おいしーぴよね!」
「くむくむ……いい香りなんだぞ」
「ウゴ、ちなみにナナは……」
ウッドがちらっとナナの皿を見る。
そこにはでーんとトマトのステーキが乗っていた。
「この匂いはガーリックソースだね。トマトを引き立てるのには、常にソースが重要だからね」
ぴこぴこ。やはりトマトか……。
「んー、ガーリックソースが香ばしいですね……!」
「ああ、さっそく食べよう……」
ドンガラガッシャーン!!
窓の外から雷鳴が響いた。
大きな音だったのでちょっとびっくりした。
「ぴよ! 特大の雷ぴよね!」
「わふぅ。落ちたのは近いんだぞ」
「ウゴ、落ちたのはすぐそこだね」
「ディアたちは怖くないのか?」
割と子どもたちは平静だな。
ディアはどーんと胸を張る。
「窓に張り付いて慣れたぴよね!」
「なるほど……頑張りましたね!」
ステラがディアの頭を撫で撫でする。
「ぴよー。かあさまは雷どうなのぴよー?」
「まぁ、苦手ですね……。痛いですし、スタンや麻痺が……!」
「状態異常が苦手なんだぞ」
「音や光は大丈夫なんだな……」
ドンガラガッシャーン!!
ふたたび窓の外に稲妻が光った。
「おおう、また近くか……。なんだか頻度多いな」
とりあえずステーキを食べてしまうか。
サボテンはとろっとしており、ナイフを当てるだけで切れるレベルだ。
細く切られたマッシュルームとガーリックソースを絡めて……ぱくり。
「んー……! 上品な味わいだな」
熟成というだけあって、苦味は全くない。
青臭さも全て抜けており、サボテン肉の旨味だけが残っている。
間違いなく手間暇のかかった一品だ……!
もぐもぐ、これはおいしい!
「ぴよ! あたし、これ好きぴよー!」
「ええ、とってもおいしいですね……!」
盛り上がりながら食べていると、また窓の外が騒がしい。
ドンガラガッシャーン!!!
3度目の雷だな。というか、だんだん近づいてないか……?
すぐ近くに落ちた感じだが。
と、そこで砂コカトリスたちがもぞもぞと起き出した。どうやら雷で目が覚めてしまったようだな。
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