606.規律だいじ
砂コカトリスを連れて、宮殿へと戻る。
「ぴよ〜。こっちぴよー!」
「「ぴよー!」」(はーい!)
ディアの通訳のおかげで、コカトリスとの意思疎通はスムーズだ。
ぴよぴよと一列に並んだ砂コカトリスたちも、宮殿に向かってくれる。
ぴよっぴよ。ぽにっぽに。
一直線にコカトリスが縦に歩くさまは、中々壮観である。
なお、ステラとレイアは砂コカトリスの一番前、ヴィクター兄さんは一番後ろについていた。
ひそかにもふりながら……。
「ウゴ、ずいぶんキッチリ並んで歩くね」
「わふう。歩幅も身体の揺らし方も似てるんだぞ」
「そうだな……。もしかして規律性が高いのかな? さっきもこんもり塊になっていたし……」
並んで重なるのに、そういう性質はあるのかもしれない。
「ウゴ! そうかもね!」
「ああ、意外な発見だな……」
そのまま歩き続けると、風がさらに強くなる。
ほこりが宙を飛んでいた。
宮殿裏のサボテン畑に入る。風と砂はここまで来ていた。
「さて、人に会ったら説明がいるかもだが」
サボテン畑で誰かに会うかな。そう思ったが……すでに人影はいない。
「くむくむ……。ちょっと前に離れたみたいなんだぞ」
「ふむ、退避済みだったか」
それならコカトリスを説明する手間も省ける。
ぴよぴよ。本当に規則正しい。
ただ……一列に歩きながら、コカトリスたちは思い切りサボテンを見ている。
「ぴよ……」(じぃーー……)
この目つき、覚えがある。
食欲に耐えているコカトリスの目つきだ……!
「ぴよちゃん、お腹空いてるんですか?」
もちろんステラも即座に気がつく。
「ぴよ! あのこんもりはお腹空くかもぴよね」
「ウゴ、体力消耗しているのかも」
ふむ……俺は魔力を集中させてサボテンを手に生み出した。実物を触って食べたので、かなりの速度で生み出せる。
他の植物も食べるとは思うが、まずこのサボテンなら外れはないだろう。
「ぴよよっ!?」(ご飯の香りだっ!?)
「ぴよ……ぴよ!」(着ぐるみぴよの羽から……サボテンが!)
コカトリスがざわめく。しかし列は崩さないな。後ろから覗き込むようにしている。
「お腹が空いているなら、これを食べてくれ」
「ぴよー! ごはんぴよよー!」
ディアが一番前の砂コカトリスにサボテンを渡す。そのまま砂コカトリスは順々に後ろにサボテンを渡して……おおっ、なるほど……。
そういう風になるんだな。
「「ぴよー!」」(ありがとー!)
そうして行き渡ったところで、砂コカトリスたちはサボテンをガツガツ食べ始める。
よしよし……そんなことをしている間に、砂のドラゴンは迫ってきた。
宮殿までもう少し。すぐに去ってくれればいいんだがな。
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