604.黒い砂嵐
「むぅ……たしかに、また砂嵐が……」
ステラが彼方に目をやる。
砂嵐は……来ているな。さっきに比べるとかなり黒い砂嵐だ。
「こちらに来ますでしょうか?」
もふふふふ。
レイアがぴっと塊から出た羽を触りながら、ステラに問いかける。
さすがレイア。隙あればもふってる。
「じぃー……そうですね、徐々に近づいています」
「じゃあ宮殿に戻らないとダメか」
「ぴよ! この子たちも入れてあげて欲しいぴよ!」
「わふ。置いてけぼりはかわいそうなんだぞ」
「もちろん、コカトリスたちがいいなら……大丈夫だ」
「ウゴウゴ、よかった!」
学者先生たちがアレコレ言うかもだが……まぁ、ヴィクター兄さんも説得してくれるだろうし。
黒い砂嵐はこちらへ近づきつつある。
「もし反対する人がいても物理的に解決できますからね」
「深くは問わないんだぞ」
「ぴよ! たのもしーぴよ! じゃあ、ちょっと聞いてみるぴよね!」
ディアが砂コカトリスとぴよぴよ会話を始めた。
ステラはすすっとレイアの隣に移動している。
速い。
「ふむ……。しかしこんなにこんもり重なるものなんだな」
「いつも、こうしているわけではありませんが……やはり触り心地はぴよちゃんですね」
ステラがぴこっと塊から出た羽をもみもみしている。レイアと並んでだな。
「ウゴ、風がこっちに吹いてきてる!」
ウッドがこちらに呼びかける。
残念ながら俺は着ぐるみなので、よくわからない。
しかし……ざわっと背中があわだつ。
「……これは魔力か? あの砂嵐から……」
間違いない、こちらに近づいてる砂嵐からだ。
そこから魔力を感じる。
俺の言葉にステラも頷いた。
「ええ、私も……感じました。どうやら砂の精霊、あるいはもっと別の魔物みたいですね」
そこにヴィクター兄さんとナナがぽよぽよと合流してきた。
「コカ博士、ナナ。砂嵐がまた来ているんだ」
「あっちの黒いのね……。んう? なんだか妙な感じだね」
「砂の精霊のような感じだが、あそこまで黒くはないな。数が多すぎる」
「……異常なのか?」
「砂の精霊が集まっても、もっと小さい嵐だ。それに色合いが黒い。砂の下の土が混じっているようだが」
そこまで話をしたとき、砂嵐のほうから雄叫びが聞こえてきた。
「グオオオッッ……!!」
渦巻く砂嵐が動いた。
まるで生きているかのように。
「なっ……!?」
あっという間に砂嵐が別の姿に変わる。
それはまるで、巨大なドラゴンのようであった。
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