602.砂ぴよ来ました!?
大広間にて。
ステラの驚異的なバッティングにより、砂の精霊はことごとく粉砕されていた。
魔力の欠片が広間の床に散らばっている。
「ふぅ……! どうでしょうか?」
スイングの構えを解いたステラが屈託なく笑う。
ちなみに息は少しも切れていない。
「もぐもぐ……。やはりこうなったね」
「うむ、そうだな……」
精霊魔法も健闘したが、高速で動き回るステラを捕捉することはできなかった。
結局、砂精霊は一度もステラに触れることはなかった。
「……ふむ、これで彼女の強さがわかったかな?」
ヴィクター兄さんがぴこぴこと羽を動かす。
「ああ、信じられん動きだ……」
「伝説の数々も眉唾ではなかったのだな……」
学者先生たちは唖然としながらも受け止めているようだ。まぁ、目の前で実演したわけだしな。
魔力を使い切ったようで、かなりお疲れだ。
「ふふふ、みなさんもぜひ野ボールで身体を鍛えましょう……! このぐらいには強く健康になれますので!」
「……もぐもぐ。バット以前から強かったような」
「ま、まぁ……心の持ちようだからな」
そんなふうに話していると、奥からカカがぽよっと歩いてきた。
「ここにいたか、コカ博士。ちょうど良かった」
「なにかあったのか?」
「ほら、前に少し話をした砂コカトリスの件だが――」
その言葉を耳にした瞬間、ステラが耳をぴくぴくと動かした。
「ほほう……? 砂ぴよちゃんですか……」
カカがステラにも向き直って説明する。
「最近、砂ぴよがこの宮殿の近くに来ることが多くなったのだ。前はもっと遠くに生息していたのだが」
「興味深い現象だな。そういうときは、だいたい何らかの変化があるものだが」
ヴィクター兄さんがぴこっと羽を動かす。
カカも羽をぴこぴこさせている。
「ああ、今も砂ぴよが来ているぞ?」
「なんですって……!?」
「きみの家族とマスターレイアがすでにそばへと行っているようだが」
「そ、そうなのか?」
知らなかった。
まぁ、レイアがそばにいるなら大丈夫だろうが。
ステラがぐっと拳を握りしめる。
「どこに砂ぴよちゃんがいるのでしょう!? すぐに行かなくては……!」
ステラならそう言うと思った。
そんな感じで、俺たちは野外に出ることにした。
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