598.謎の塊
その頃、ディアたちは窓際で砂嵐ウォッチングをまだ続けていた。
「ぴよー。砂嵐、弱まってきたぴよねー」
「だぞだぞー」
ウッドの生み出した綿に仲良く包まれながら、窓から外を眺め続ける。砂嵐以外は特に何も見えないけれど。
「こーして見続けると、意外と飽きないぴよねー」
「むしろ外はどうなのとか気になるんだぞ」
「ぴよ! 外の世界を想像すると、そうぴよね……」
「ウゴ、確かに……世界の不思議」
「でもどうしてこんな砂嵐になるんだぞ?」
「ぴよ……。あとで、とうさまとかあさまに聞いて見るぴよ」
外の砂嵐はさらに弱まっていき、窓を叩く砂の音が小さくなっていく。
「砂嵐が終わったら、窓を開けてみたいんだぞ」
「ウゴ、外の空気を感じたい?」
「だぞだぞ。興味あるんだぞ」
「いいぴよねー。あっ、そろそろ砂の音もしてないぴよ」
ディアがすっと立ち上がり、窓に顔をべちゃーとくっつける。
「ぴよよ。しずかーに、しずかーになっていくぴよよ」
「我の鼻は当てにならないから、主の耳が頼りなんだぞ」
「ぴよ。任せるぴよよ……!」
そうしてしばらく経つと、砂の音もしなくなった。
風は吹いているが、そよ風程度だ。
「そろそろ大丈夫ぴよ?」
「ウゴ……そっと少しだけ開けてみて」
「ラジャーなんだぞ」
そうしてちょっとだけ窓を開けた。
空気が入れ替わり、ディアたちは新鮮な気持ちになれる。
「ぴよ! あっちのサボテン畑が砂まみれぴよね」
「やっぱり外はすごいことになってたんだぞ」
「ウゴ、でも風が吹いてるから砂は飛びそうだね」
「そうぴよね。丸っこい建物やサボテンもそうぴよ」
そこでディアは砂漠にこんもりとした砂の塊があるのに気がつく。
大きさは……小屋くらい。いくつもの丸が重なってできているようだった。
「あれ、何ぴよ?」
塊は砂漠の上を、ずりずりと跡を残しながら移動している。ゆっくりと宮殿に近づいているようだった。
「くむくむ……。距離が離れすぎているんだぞ」
「マルちゃんでもわからないぴよ?」
「おおきな草だんごが集まっているみたいな形だけど……だぞ」
「ウゴ、魔物なのかな?」
「ぴよ! ヤバぴよよ!」
ディアが慌てたそのとき、ひときわ強い風が吹いた。
それが塊の上にある砂を吹き飛ばす――。
「ぴよ?」
塊はもこっとした毛の集まりになった。
「ウゴ、あれってまさか……」
「わふっ。コカトリス……だぞ?」
「本当ぴよ? 観察するぴよよ……」
じぃっとディアが塊を見つめる。
その間にも、塊はじりじりと宮殿へと近づいてくる。
「死んでるぴよ、生きてるぴよ、死んでるぴよ……」
「我が主が迷っているんだぞ」
「ウゴ、動いているから生きてるんじゃないの?」
「そうとも限らないのが、難しいところぴよよ……!」
「ウ、ウゴ……そうなんだ……」
謎の塊を前に、ディアは頭をフル回転させる。
ぴぴぴよよよ……。
そしてついに、ディアが羽をぴっと上げた。
「これは……生きているように見えて、死んでるぴよよー!」
つまり生きてるんだぞ⊂((・▽・))⊃
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