595.ナナぴよは名誉会員
その頃、ヒールベリーの村。
夕方、野ボールを終えたシュガーとシエイが土手を歩いていた。
「いやー、夏になるとスポーツが気持ちいいなぁ」
「全くでござる」
この辺りは暑すぎず、夏でもスポーツができる。
ため池にはコカトリスたちがぴよぴよと浮かんでいた。
「コカトリスもすっかり池が気に入ったみたいだな。うちらも泳げたらよかったかもだけど」
「さすがに池は危ないでござるな」
コカトリスたちはぷかぷか、仰向けに羽を組んで浮かんでいる。
「スヤァ……ぴよ……」
「おっ?」
シュガーが空を見ると、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。お天気雨だ。
「やっべ、急がなきゃな」
「ロウリュはどうでござる? 運動後のアレは最高でござるよ」
「いいぜ! そうしよう!」
シュガーとシエイは急いで土手を降りていく。
一方、コカトリスたちは……。
「ぴよよぅ……」(スヤァ……)
「ぴよ」(雨が降ってきたかも)
「ぴよ? ぴよよ」(マジ? あっ、本当だ)
半分寝落ちながら、コカトリスはため池に浮かんでいる。
「ぴよ?」(でもよく考えれば、もう体の半分は水浸しでは?)
「ぴよ」(賢い。浮かんでるわけだし)
ぽつぽつ。小雨の音が気持ちよく水面を一定のリズムで叩いていた。
それがまた眠気を誘う。
「ぴよよー」(このまま大自然の雨を全身で受けようー)
「ぴよー」(おっけぃー)
この程度で体調を悪くするコカトリスはいない。
こうしてコカトリスたちは、スヤァ……と眠りについたのであった。
◇
俺たちが部屋を出ると、ちょうどナナぴよと出くわした。
ぴこぴこ。
ナナが羽を動かす。
「おっ、見て回るのかい?」
「そうだ、まずは俺たち2人だけでな」
「ディアたちは窓の外の砂嵐のほうを見ていたいようで」
「なるほどね。砂嵐は他ではめったに見られないし」
「レイアは部屋にいるのか?」
「うん、暑いのが堪えてるみたいだ。ザンザスはすごしやすいからね」
……いくら通気性を努力しても、ぴよ帽子でこの辺はなかなかヤバいと思うが。
しかしレイアの魂だからな、口は出すまい。
「でもナナが出てきてくれて、助かりました」
「……なんで僕が出てくると助かるの?」
「もちろんナナが名誉野ボール会員だからですよ……! ふふっ、楽しみになってきました!」
ステラが廊下を進んでいく。
その後ろを俺とナナ――ダブル着ぐるみが歩く。
ぽにぽに。
歩きながらナナがこそっと聞いてくる。
「名誉野ボール会員って、なに?」
「……それな。俺も初めて聞いた」
「(私以外の)表彰は大事ですので……!」ζ*'ヮ')ζ
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