583.砂の街へ
休憩室で軽くご飯を食べ、村を後にする。
お金は……適当に置いておくしかないな。みんな、酔いつぶれているし。
「ぴよ! 出発ぴよよー!」
村を出発し、ばびゅーんと空を飛ぶ。
そうしてさらに数時間経っただろうか。
時刻はお昼をちょっと回ったくらいだろう。
まばらに木の生えた山を越えると、景色が一変した。
緑の原っぱから、完全に砂の世界になる。
「ウゴ、砂だー!」
「ここから南の諸国ですね……!」
南の諸国はどれも小さく、しかも俺の住む国とは友好関係にある。
ナーガシュ家を擁する五大貴族より、それぞれの国は小さい。それくらい国力には差があるのだ。
砂漠を飛び始めてすぐ、大きな街が目に飛び込んできた。街の真ん中に小さいが湖がある。
「ここが最後の休憩地点だな。あとは砂の上でしか休めない」
この街は砂漠と荒野の境目にある。街の近くの砂地に俺たちは着地した。
「ぴよー! すなぴよー!」
ナナ組からディアが駆け出し……思いっきり頭から砂にダイブした。
ズザザァー!!
華麗なダイブだ。お腹で砂を堪能している。
「きもちいーぴよねー!」
「我もやるんだぞー!」
子犬姿のマルコシアスも駆け出し、スライディングする。
ズザ……。
マルコシアスの上半身が砂に埋まる。
「わっふ」
「マルちゃん……どうしたぴよ!? 砂の上を滑るぴよよ!」
「はまったんだぞ」
「ぴよ! 今助けるぴよー!」
ディアがマルコシアスのそばへスライディングし、羽でぱぱぱーっと砂を払う。
マルコシアスは起き上がり、首を振って砂を落とした。まだかなりの砂が体についているが……。
「ありがとだぞ!」
「どういたしましてぴよ!」
「歩きながら砂をとるぴよ!」
ぱたぱたぱた。
ディアが羽でマルコシアスの砂を落とす。
「ぴよっ! さらさらで落としやすいぴよねー」
「ラッキーだったんだぞ!」
そんな感じで街へと歩いていく。
砂は確かに軽そうで、さらっとしていた。
完全に砂漠だな。
ちょっとテンションが上がる。
見慣れない風景というものはいいものだ。
「帽子は問題なし、と……」
レイアがきゅっとぴよ帽子の位置を直す。
……明らかに暑い気はするが、帽子を脱ぐ気配はないな。
「あっ」
ステラが声を上げる。その視線の先、地平線の彼方に大きく砂煙が舞っていた。
遠くてよくわからないが……いや、全長数百メートルくらいの砂嵐だ。
「砂嵐か。魔物が起こしている場合もあるが。こちらには来ないようだな」
「すごいな……」
初めて見た。
大量の砂が巻き上げられ、いっそ壮観だな。
間違いなく村の近辺では見られない。
「ぴよー……すごぴよねー」
「ウゴ、あんなに高く砂が飛ぶんだね」
「わふ。自然の驚異ってやつだぞ」
ふむふむ。子どもたちも普段見ない光景に心打たれているようだ。
それだけでも来る価値があったな。
友好関係……舎弟とも言うかもだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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