576.ナナぴよの限界を
その翌日。
ステラはたくさんの品物を持って、ナナの工房を訪れていた。
ディアとマルコシアスも一緒である。
「ぴよよ。ナナぴよには今回もお世話になるぴよね」
「だぞだぞ。運んでもらわないといけないんだぞ」
ふたりは山盛りの箱を見上げる。
明らかにヤバい量であるが、ステラはしっかりとした足取りで運んでいた。
「……またたくさん持ってきたね」
「ええ、ぜひともよろしく頼みます……!」
ステラが持ってきたのは精霊学会に持っていくアレコレである。
「着替えはいいけど、そんなにバットやボールは必要なの?」
「グローブもありますよ……!?」
「そういうことじゃないんだぞ」
「うん、そういうことじゃないんだよ」
ステラが山盛りに持ってきたモノの大半は野ボール用品であった。
「こほん。あのアイスクリスタルの討伐はバットなしには不可能ですからね」
「バットがあっても無理じゃない?」
「ぴよ。今日のナナぴよは冴えてるぴよね。あたしもちょっとそんな気はしてたぴよ」
「そんな……いずれ全人類があのレベルに到達するのがわたしの夢なのですが……」
「心の声がだだ漏れなんだぞ」
「今日のかあさまは、抑えがきいてないぴよね」
でんと置かれた野ボール用品の山。
それを見て、ナナはふぅと息を吐く。
「まぁ、あなたがそんなことを言うのも僕くらいだろうから……いいんだけどさ」
「ありがとうございます……! やはりナナぴよは偉大な冒険者! Sランク冒険者です!」
「褒めても何もでないよ?」
しかしまんざらでもないナナ。
「そんなナナぴよにお聞きしたいのですが、ナナぴよの容量はどの程度が限界ですか?」
「なんで今、その質問をしたの?」
「いえ、個人的な興味で」
「騙されちゃダメなんだぞ、ナナぴよ……! 母上の罠なんだぞ!」
ナナが軽く首を振る。
「もっと持っていけって? ……僕も自分の限界は知らないんだよ。ご存知の通り、持っていくには手間がかかるからね」
「つまりまだまだ輸送可能だと。思ったのですが、ナナの魔力を浸透させればいいんですよね?」
「ぴよ。そんな話だったぴよね」
そこでステラはすっと手をナナへと差し出した。
「試してみましょう。わたしを間に通すことで……もっと早く品物を収納できるようになるかを!」
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