570.青リボンのエルぴよちゃん
それから少しして、ヴィクター兄さんから手紙が来た。精霊学会への正式な招待状だな。
宛先はステラになっているが、これはアイスクリスタルを倒したからこそだ。
当然参加すると書いて返事を送った。
開催は3週間後だ。十分、時間はある。
「うーん、可愛いですね……」
ステラが目をきらきらさせている。
今日の俺は久し振りにエルぴよちゃんなのである。
なおリボンのカラーは青に変わっていた。アイスクリスタル撃破記念リボンらしい。
着ぐるみの中から、俺はつぶやいた。
「冷房機能と対砂漠機能をアップ……か」
「見た目には変わってないぴよ」
「確かに魔力を使うと涼しくなってはいるが」
ひんやり気持ちいい。
しかし着ぐるみの中で涼むとは……いや、疑問に思ってはダメなのだ。
「でも慣れておくのは大切なんだぞ」
「確かにな。いざというときに砂漠で困りそうだ」
今日はもう外出の予定はない。このまま試運転と行こう。
と、俺の着ぐるみのお腹をステラがさわさわしている。ちょっとくすぐったい。
「……ステラ?」
「外はどうかな、と。ふむふむ……ここもひんやりしてますね」
「触りたいだけなんだぞ」
「ち、違いますよ。極めて技術的な話です」
思い切りコカトリスを揉むのと同じ手つきなんだが……まぁ、いい。
この着ぐるみを着ていると、スキンシップに遠慮がないステラなのだ。
「問題があるとすれば、やはり飲食か」
前は事情を知っている人だけになる瞬間が多かったし、食事は分けて取れたからな。
だがヴィクター兄さんの手紙にもあったが、今回は懇親会等が不可避だ。
正直、ちょっと不安はある。
「ウゴ、慣れなきゃいけない?」
「そうだな。少しくらいは懇親会用の食事も練習しておきたい」
「では……用意してきますね!」
ステラが俺の着ぐるみのお腹を揉むのを止めて、キッチンへと向かった。
「ぴよ! ご飯とお水は大事ぴよねー!」
「最小限にはしておきたいがな」
しばらくすると、ステラがご飯を色々と持ってきた。
トマトジュース、刻みトマト。
全て赤い。真っ赤である。
「ヴァンパイアといえば、トマト料理ですからね!」
ほかほかの湯気が上がっているのは、トマトソーススパゲティであった。
「……頑張るんだぞ、父上!」
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