565.地下のトロッコ
アイスドラゴンの牙を食べるコツはぬるめの水を飲みながら食べることである。
あとは慌てずゆっくり食べることだな。
これで頭キーンを少し和らげることができる。
「コカトリスは頭がキーンとはしないようですなぁ……」
「ぴよちゃんは無敵ですからね……!」
ステラがうんうんと頷く。
「それにしても、このアイスドラゴンの牙の氷は柔らかいですな。何か秘密が……?」
「まぁな、秘密はある。残念ながら教えられないが」
「ははは、それはその通り!」
アイスドラゴンの牙を作る際に使ったテクニックは2つ。
ひとつは薄く広い刃で、氷を鰹節のように削ること。これでふわっとした食感になる。
もうひとつは氷を適度に温めて、柔らかい状態で削ること。冷たすぎるとうまく削れないのだ。
どちらも前世では料理サイトに載っているくらいの知識だが……こちらではまだあまり知られていない。
「おいしいですにゃー!」
「魔導トロッコで輸送スピードが速くなれば、ザンザスにもこうしたアイスドラゴンの牙を輸出できるようになる」
「まさに! さらなる両者の発展を祈願しましょう!」
特使とは上機嫌で会食を終えた。
終始丁寧で良い人だな。
さて、最後に魔導トロッコの実演がある。
俺達はレストランを出て、大樹の塔の下にある地下空間へと移動した。
◇
「ぴよっぴよ」(せっせ……)
「ぴよぴよ」(これはこっちーと)
地下ではイスカミナとその助手、そしてお手伝いコカトリスが作業をしていた。
魔導トロッコはほぼ組み上がって、レールの上に乗っている。
「もぐ! もう少しでオッケーですもぐ!」
「慌てなくていいからな」
地下空間にも喫茶スペースは作ってある。大樹の家もあるしな。
作業を眺めながら紅茶を飲み交わせばいい。
特使は天井を見上げながら感嘆する。
「話には聞いておりましたが……なんとも雄大、神秘的ですな」
「ここは平時には休憩所、宿泊所としても機能している――今後は輸送にも力を入れるつもりだ」
「確かに……この風景、利用しない手はありませんな。ぴよシートも好評だとか」
俺は特使の言葉に頷く。
「シートと一緒に今後はぴよトロッコそのものの商品化も進めたいな。小型サイズなら売れそうだし……」
「ほう、それは面白い……!」
ん?
特使は初耳のような反応だな。
ちらっとレイアを見てみると、にこやかな顔の中で少し焦っていそうな雰囲気がある。
……なるほど。ぴよトロッコの玩具はまだザンザスでは話を進めていないのかな?
後日、この件で喧々轟々のやり取りがあったそうだ――最終的にレイアがぴよぬいぐるみの横流しで勝利したらしいが。
まぁ、いいか。
話がまとまれば俺はオッケーなのだ。
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